意識改革は小さな実験の積み重ねでようやく起こる

【澤円】「意識改革」についても同様ですよね。「意識を変えろ」という言葉をよく使う経営者もいますが、それは意識改革がすぐに成功につながると考えているからでしょう。

【越川慎司】わたしがクロスリバーを立ち上げてから約8年間にわたって800社以上の企業の「働き方改革」をサポートしてきて感じたのは、本当の意味で意識が変わるには5年や10年といった長い時間が必要だということです。ですから、最初から意識改革を目指すのではなく、やることは小さな実践や実験という行動です。すると、「やってみたら意外とよかった」と思えることも出てきます。それこそ、意識が変わる瞬間だと思うのです。

たくさんのビジネス書を読み、成果につながるといわれる方法を数多く知ったとしても、それを実践しなければなんの意味もありません。実践や実験を通じて「やってみたら意外とよかった」というものを積み重ねて習慣化することが、成果を生むことにつながるのだと思います。

トップ5%社員のスケジュール帳の使い方

【澤円】最後の「⑤常に『ギャップ』から考える」も行動につながる話ですね。

【越川慎司】トップ5%社員のスケジュール帳の使い方に、ひとつの特徴が見られました。それは、目標を達成したい日付にまずマークをするということです。すると、「このタイミングでイベントを行うには、いつまでに企画書をつくり、いつまでに資金を集めなければならない」というように、ゴールから1週間前、1カ月前、3カ月前にはどのような状態にしておくべきかを逆算して考えることができます。

スケジュール帳
写真=iStock.com/Tippapatt
※写真はイメージです

まずゴールを見据えて、現在とのギャップを捉えて行動するということです。

IT業界でいう、いわゆる「アジャイル」と呼ばれる進行法です。まずゴールを決めて、正しいと思われる方法と中間ポイントを決め、そこでチェックした結果、もしうまくいっていなかったら調整するというかたちです。

【澤円】逆にこの意識が欠けていると、どのような不具合が起きると考えられますか?

【越川慎司】やはり、修正しづらくなりますよね。「今日はとにかくこれをやらなければ」「明日はこれを」というようにタスクを目の前に積み上げていくことになり、ゴールはおろか中間ポイントも設定できていませんから、必要なタイミングでの適切な修正ができないのです。もちろん、それでは成果から遠ざかってしまいます。