完璧に見えるリーダーだとサポートを頼みづらい

【澤円】次の「②『弱み』を見せる」というのは、どのようなものでしょう?

【越川慎司】チームで仕事に臨むためのものです。いまの時代の仕事は、かつてと比べてはるかに複雑化しています。わたしたちの調査では、ビジネスパーソンがひとりで完結できるタスクは13%に過ぎないことがわかりました。残りの87%は、いろいろな人を巻き込んで協力を得なければ完結できないのです。

そうするためにも、弱みを見せることが有効です。逆に弱みを見せないとどうなるかというと、「あの人はなんでもできる」と勘違いされ、困ったときにもサポートを得られないということになりかねません。

【澤円】リーダーの場合、それこそ「自分の弱みを見せたくない」と考える人も多そうです。でも、リーダーであっても弱みを見せることが大切になってくるということですね。

【越川慎司】むしろ、リーダーだからこそ積極的に弱みを見せてほしいですね。リーダーの役割は、「1+1」を「2」ではなく、「3」や「5」にしていくことだと思うのです。つまり、メンバーそれぞれの強みも弱みも把握したうえで、どうすればチームのパフォーマンスを最大化できるかを考えなければならないのです。

そこで、リーダー自らが「自分はデータ分析ができない」「しゃべりが苦手なんだよ」というように自己開示すれば、メンバーも弱みを明かしてくれるようになります。そうすることで、メンバーが持つ能力をしっかり把握できるようになるのです。

越川慎司さん
写真=石塚雅人
越川慎司さん

あらゆる行動を「実践」「実験」と捉える

【澤円】「③『挑戦』を『実践』だと捉える」「④『意識改革』はしない」については、ともに「行動」の重要性を指しているようなものですか?

【越川慎司】そうなりますね。行動が重要だと思っていても、なかなか一歩を踏み出せないという人はたくさんいます。その大きな理由は、行動を「挑戦」だと捉えているために、その先にある失敗を恐れるからだと思うのです。でも、あらゆる仕事の結果が成功か失敗かに分けられるわけではないですよね?

そこで、行動を「挑戦」ではなく「実践」や「実験」と捉えたらどうでしょうか。そうすることで、失敗せずに成功することを目指すわけではなくなり、実践や実験の結果から学びを得ることが目的になるはずです。すべての行動の結果から学びを得られるようになるので、必然的に成長につながっていくでしょう。