ペットボトル飲料「颯」から浮かぶ商品イメージ

漢字は商品名に使われることも多いですが、漢字が分かるとその商品のコンセプトというか、開発側がどういうふうに受け取られたいかがもっとはっきり分かります。たとえば「そう」というペットボトルのお茶がありますが、僕、すごく面白い商品名だと思うんですよ。

「颯」という字はあまりメジャーじゃないですが、爽やかな様子を意味する「颯爽」という二字熟語に使われるのを見かけることが多いですよね。このときの「颯」は「さつ」と読みます。実は「颯」を「そう」と読む例はあまり多くありませんが、よく使われる「さつ」ではなく「そう」という読み方を選んだということから、企業の伝えたいイメージが読み取れるんではないかと思います。

この字は、風がさあっと吹く様子や、転じて人やものが素早く動く様子を意味しています。そういう爽やかなイメージの名前の通り、実際、とても華やかな香りに特徴があるお茶です。

こんな感じで、漢字の知識があると得する場面はけっこう多いんです。でも、日本人にとって漢字はあまりに身近だから、ちょっと珍しい漢字を目にしても深く考えないですよね。「霹靂一閃」にしても「颯」にしても、「よくわからない漢字だけど、まあいいや」って、なんとなく素通りする人が多いと思うんです。

だからこそ、知っていると他の人と差がつけられる。「漢字を知っていてよかったなあ」と感じる場面は、一日に何度もありますよ。

漢字はとてもお得な趣味

ここまで、外からの情報を解像度高く受け取れるという面で漢字の良さをお伝えしてきましたが、逆に、自分の考えや感情をアウトプットするときにも、漢字はとても役立ってくれます。

漢字を使った難しい熟語はたくさんありますが、どの言葉にも、その言葉でしか表現できないニュアンスがありますよね。「飄々」という二字熟語を辞書で引くと「考えや行動が世間ばなれしていて、つかまえどころのないさま」と書いてあって、もちろんその通りなんですが、でも辞書通りに説明しても、「飄々」という言葉の持つ独特の感じは表現できていないと思います。

さっきの「颯爽」も同じで、「颯爽と現れた」という文を「爽やかに現れた」と言い換えても間違いではないですが、やっぱりニュアンスが微妙に違いますよね。

QuizKnock『QuizKnock 学びのルーツ』(新潮社)
QuizKnock『QuizKnock 学びのルーツ』(新潮社)

「颯爽」という字だけが持つ独特の颯爽とした感じは、他の言葉では表現できません。

だから漢字を知っていて語彙が豊富だとものごとをもっと正確に考えたり表現したりできるようになるし、自分自身に対しても「今日の僕は鬱々としているな」みたいに、客観的に見ることができるようになるかもしれません。

しかし、こうやって改めて振り返ると、漢字を知っているメリットはたくさんありますね。しかもさっき言ったように、漢字は一文字覚えるだけでレベルアップできますから、そのメリットを感じやすい。とてもお得な趣味です。

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