カキにオスを意味する「牡」が使われる理由

斑れい岩という、墓石によく使われる岩があります。多くの場合は「はんれい岩」とか「斑れい岩」などと書かれるんですが、漢字だと「斑糲岩」という表記になります。

でも、この「糲」という漢字、なんかヘンですよね。漢字としておかしいというのじゃなくて、岩を意味する言葉に使われている字なのに、「米」という食べ物を意味するへんが含まれているのはやや妙です。実はこれは斑れい岩の見た目が玄米に似ていることから米へんの漢字が使われているともいわれているんです。

「糲」の右側、つまりつくりは読み方を意味する部分で、「れい」と読みます。他には、貝のカキを漢字で書くと「牡蠣」ですが、その2文字目の右側にありますよね。

ここに注目すると、「斑糲岩」に付随して、牡蠣の音読みが「ぼれい」という新しい知識も手に入ります。

ちなみに、「牡蠣」の「牡」の漢字には生物のオスという意味があります。オスの馬のことを「牡馬」ということがありますが、その「牡」です。では、カキとオスにどういう関係があるのかというと、昔はカキはオスだけしかいないと考えられていたという説があるんですね。だからこういう漢字が当てられたわけです。

こんなふうに、漢字に着目すると、ものの名前の由来を推測できたり、知識が広がったりしていくんですよ。身近なのに、調べていくと思いもよらない知識が手に入るのも、漢字の面白いところですね。

マンガの必殺技の意味がストンと入ってくる

こういう漢字の知識は雑学としては面白いけれど役に立たないよね、と思う人もいそうです。でも、僕の考えは違うんです。漢字の知識は面白いだけじゃなくて、とても役に立つんですよ。

というのも、日本社会にはあちこちにたくさんの漢字がありますから、漢字への理解が深いと、その漢字が使われている場面やモノのコンセプトを他の人よりも深く感じ取れると思うんです。

たとえば、少年漫画『鬼滅の刃』(集英社)に「霹靂一閃」という技が出てきます。「霹靂」は難しい漢字ですが、意味を知っていますか? 急な雷のことです。「一閃」はピカッと光ることですよね。ということは、「霹靂一閃」は、まるで急な雷光のような技だというイメージがつきます。

「青天の霹靂」という言葉もあって、こちらは割と知られているかもしれません。「びっくりするような急な出来事」という意味ですよね。この言葉も、「霹靂」の意味を知ると具体的で視覚的なイメージが湧きますから、もっと深く理解できます。青天、つまり青く晴れ上がった空にいきなり雷が光る、という意味ですよね。そのくらいびっくりさせられる出来事、ということです。