今年あまり本が読めなかった人におすすめの1冊

続いて、4位以下から、注目の書籍をご紹介します。

三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社)
三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社)

第4位は、2024年に一大ブームを巻き起こした『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』でした。文芸評論家の三宅香帆さんが、近代以降の日本における労働史と読書史を紐解きながら「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」という問いの答えを導き出した意欲作です。

「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」の答えを一言で要約すると「本はノイズ込みの情報にあふれたメディアであり、多忙になるとノイズ込みの情報を得る余裕がなくなるから」。そう言われると、多くの人は「なるほど、自分もそうかもしれない」と思うのではないでしょうか。

三宅さんによると、「ノイズ込みの情報」は本だけではありません。映画や舞台なども「ノイズ込みの情報」に含まれます。そう、あなたが最近映画を観られていないのは、単に時間がないからではありません。ノイズを楽しむ余裕がないのが理由なのです。

三宅さんは本書の結びとして、「働きながら本を読める社会」をつくるために「半身で働こう」と提案しています。今年あまり本が読めなかった人は、ぜひ本書を年末年始の課題図書にして、2025年の働き方や生き方をじっくり考えてみてください。

成長実感が得にくいと若手は去っていく

第12位の『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』にもご注目ください。

古屋星斗『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』(日本経済新聞出版)
古屋星斗『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』(日本経済新聞出版)

本書の著者である古屋星斗さんは、次世代社会のキャリア形成の研究者。前著『ゆるい職場』では、職場を「ゆるい」と感じている新入社員の離職傾向が強いことを指摘し、読者を驚かせました。本書ではさらに一歩踏み込んで、若手が活躍できる職場のつくりかたを提案しています。

古屋さんによると、今時の若手は、「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないか」という「キャリア不安」を抱くと、成長実感の得にくい「ゆるい職場」を去ることがあります。つまり、若手の離職を防ぎたいなら、適切な成長機会を与え、キャリア不安を取り除いてあげることが重要なのです。

具体的には、次の4つのアプローチが効果的です。

(1)囲い込まず、外の体験を与える
(2)短期で成長実感が得られる業務にアサインする
(3)褒めるだけでなく、フィードバックもしっかりする
(4)本人の合理性を超えた機会を提供する

若手のキャリア不安から目を逸らしていると、優秀な部下・後輩が職場を去ってしまうかもしれません。部下・後輩のポテンシャルを引き出し、ともに大きな成果を出せる上司・先輩でありたいなら、できるだけ早く読んでおきたい一冊です。