一方通行の会話は相手のやる気を削ぐことになる

説明というと、聞き手に向かって一方的に伝えるようなイメージがありますが、実際は「双方向のコミュニケーション」です。

聞き手が本当に納得しているのか、理解しているのか注意を払いながら進めなければ、一方通行の会話になり、実は全く伝わっていなかったということにもなりかねません。

説明の苦手意識を克服するために、ぜひ知っておいてほしい心の機能があります。

それは、「心理的リアクタンス」と呼ばれるものです。

人が自由を奪われたときに発生する心理作用のことで、1966年にアメリカの心理学者ジャック・ブレームによって提唱されました。

心理的リアクタンス理論によると、「人は自分の考えに沿って行動したい」という欲求があり、誰かに指示された通りに行動することに抵抗するようにできています。

実際に、行動をいちいち指示されてやる気がなくなった経験はありませんか?

「いつになったら宿題するの!? 早くしなさい!」
「伝票は溜めずに早く提出してくださいね!」

このように一方的に指示されると、どのように感じるでしょうか?

おそらく、

「いまやろうと思ってたのに……。逆にやる気なくなったわ」
「こっちはほかにもやることがあるんだよ……。そっちの都合だけで言わないでくれよ」

というように、反論したくなるでしょう。

電話で話している心配そうな男性
写真=iStock.com/andresr
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相手に考える余地を残し、相手主体で行動させる

一方で、

「忙しいときにごめんなさいね。伝票については、いつごろ提出できそうですか?」

と、考える余地をある程度残した状態で聞かれたらどうでしょうか?

これなら、多少は動いてあげてもいいかな、という気になるでしょう。

心理的リアクタンスは、その話の有益性は関係なく、他人に行動を指示された瞬間に作用します。

そのため、どんなに相手のためを思って伝えたとしても、行動を促せば促すほど、相手の心の中には抵抗感が生まれてしまうのです。

これを説明に当てはめて考えてみると、良かれと思って一から十まで説明するよりも、聞き手に考える余地を残しておいて、自主的に行動してもらうほうがよいということです。

うまく説明するには、「たくさん喋らないといけない」「完璧に指示しなければいけない」と思い込んでしまいがちです。

しかし、そうやって自分にプレッシャーをかけても、相手はそこまでの説明は求めていません。この認識のズレこそが、お互いにとって不幸なストレスを生み出しているのです。