主張を通したければ「譲歩」しよう
「反対意見」をもっている人に自分の「主張」を伝える際には、その「反対意見」をいったん受け入れる場合があります。このようなテクニックが「譲歩」です。
「譲歩」のポイントは、相手を認めてもよい場面で相手の立場を尊重することによって、こちらの「意見」の重要な部分を通す、という点です。
その際には、「たしかに、~」という形で「反対意見」の人に一歩譲ります。そして、そのあとに「しかし、……」という形で自分の「意見」に転換して「主張」を述べるのです。
たとえば、「オンライン教育の是非」というテーマについて自分の「主張」を述べる際に、「論点」を明らかにするためには以下のような表現を用いるのが有効です。
譲歩:たしかに、オンライン教育はアクセスしやすく、多様な学習スタイルに対応できるという利点がある。
主張:しかし、対面教育には人間関係を築く機会や直接的なフィードバックがあり、これらも非常に重要である。
冒頭に「たしかに」を書くと話を聞いてもらいやすい
上記の例を見ると、「オンライン教育」か「対面教育」かという「論点」があるとわかります。また、「対面教育」の重要性が説かれていることもわかります。
ポイントは、「オンライン教育」を認めつつ、「対面教育」の重要性を説いているという点です。
「反対意見」をすぐに「否定」してしまう人が多いのですが、真っ向から「否定」されると、相手はこちらの「意見」を聞いてくれません。ですから、「反対意見」を認めつつこちらの「意見」を通すテクニックである「譲歩」を使う必要があるのです。
このように、「譲歩」には「意見」に説得力を加えることができるという長所がある一方、使い方を誤るとかえって「意見」がわかりにくくなるという短所もあります。
とくに、初心者が無理やり「譲歩」を使うと、ミスが起きがちです。以下、典型的なミスを確認しておきましょう。
譲歩:たしかに、対面教育は生徒と教員の直接的なかかわりや社会性の育成に有利である。
主張:しかし、現代ではオンライン教育が最も効果的であり、対面教育は時代遅れであり不要である。
「譲歩」の箇所では「対面教育」を「有利」と評価している一方、「主張」の箇所では「対面教育」を「不要」と断じてしまっています。「譲歩」を使う場合にはこのようなミスが起こらないよう、十分注意する必要があります。