「財布が欲しい」と思ったら、まずは何をするだろうか。“雑談の人”として活躍する桜林直子さんは「新しいお財布が欲しいと思っていたのに、気がつくと4年が経っていた。どんなお財布が欲しいのかを具体的に頭の中でシミュレーションしてみたら、細かいところを数分間考えただけで、なんと翌日には新しい財布が手元にあった。手に入れるためには具体的にイメージしないといけないことが身に沁みてわかった」という。ジェーン・スーさんとのTBSラジオのPodcast「となりの雑談」からのエピソードを紹介しよう――。

※本稿は、ジェーン・スー×桜林直子『過去の握力 未来の浮力 あしたを生きる手引書』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。

財布のバリエーション
写真=iStock.com/no_limit_pictures
※写真はイメージです

手に入れるためには具体的にイメージしないといけない

〈サクちゃん(桜林直子)〉

欲しいという感情をないものにしてきたわたしは、今でも「欲しい」が少し苦手です。

使っていたお財布の汚れが目立ってきたので新しいお財布が欲しいな。いいのがあったら買おうと思っていたのに、気がつくと4年が経ってました。

これって、「欲しい」と言いながら実はちゃんと欲しがってないんだと思って、どんなお財布が欲しいのかを具体的に頭の中でシミュレーションしてみました。

まずはサイズ。お札が折れるのか折れないのか。手触りはツルツルかザラザラか。色はどうしよう。細かいところを数分間考えただけで、なんと翌日には新しい財布が手元にありました。

手に入れるためには具体的にイメージしないといけないということが身に沁みてわかった瞬間でした。お財布屋さんに足を運んだり、ネットで探したり、写真を確認したり。すると、俄然現実味を帯びてきます。「欲しい」が「どれを手に入れるか」に変わります。

「欲しい」ものを書こうとする手が止まるとき

「パートナーが欲しい」と、5、6年思い続けている女性と雑談をしたことがあります。話を聞いてみると、彼女はどうやら8割くらいはパートナーが欲しいと思っている。しかし、実際のところパートナーがいない毎日もそれはそれで楽しいので、いなくてもいいかもという気持ちもある。欲しいと思いながらも、本当に欲しいのか欲しくないのかが自分でもわからなくなっているという状態でした。

このとき、彼女に先ほどの財布の話をして、もし本当にパートナーが欲しいという気持ちがあるなら、具体的にどういう相手を望んでいるのかを箇条書きにしてみてはどう? と提案しました。ぼんやり見てるだけではあっという間に時間が経ってしまうし、出会っていたとしても見逃してしまう。きっと手に入らないよって。

書き出してみると、自分でも意外な項目が出てきたと言って、彼女はその作業を楽しんでくれました。

欲しいものを書こうとすると、なぜか手が止まることがありました。たとえば「赤いワンピースが欲しい」と書こうとすると、似合うかな、必要かな、無駄遣いじゃないかな……という声に邪魔される。「へえ、それが欲しいんだ」とバレるのが恥ずかしいような気持ちが邪魔することもあります。「欲しい」と言ってもいいと自分に許可が出ないとき、書く手が止まるのだと思います。