「マネーの虎」は、イギリスで「Dragon's Den」として放送された後に、アメリカでも「Shark Tank」として人気番組となった。「SASUKE」は「Ninja Warrior」として世界160以上の国と地域で見られており、現地版も20カ国以上で制作されている怪物番組だ。「料理の鉄人」は「Iron Chef」としてアメリカなど各国で放送され、さらに2022年からはNetflixでアメリカ版が世界190の国と地域に独占配信された。

活況の海外向けフォーマットセールス

フォーマットセールスは、実は最近始まったビジネスモデルではない。

1985年にTBSが「わくわく動物ランド」のフォーマットを韓国KBSへ販売したことが始まりとされている。しかし、このときは映像にレポーターが写り込んでいたため差し替えが難しく、成功したとは言えない結果であった。このようにヒット番組を生み出すフォーマットを作るのは非常に難しく、ある種「運任せ」のような時代が長く続いた。

昔のテレビ
写真=iStock.com/nemke
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だが、近年、この海外へのフォーマットセールスが活況を呈している。なぜ、テレビ局はこのビジネス手法に力を入れるのか。それには、以下の2つの大きなトレンドが関係している。

1 海外マーケットで「フォーマットセールス」に対する注目が高まっている
2 配信などの「放送外収入」に陰りが見えてきた

まず1つ目の「海外マーケットで『フォーマットセールス』に対する注目が高まっている」について、解説してゆきたい。第二次安倍政権の肝いりとして設立された官民ファンド「クールジャパン機構」が旗振りとなって、2013年から日本のコンテンツを海外に輸出しようとする施策「クールジャパン」が始められた。

このクールジャパンの「最前線」とも言えるのが、カンヌ映画祭で知られる南仏のカンヌで毎年開催されている「MIP(Marche Internationale des Programmes)」と呼ばれるテレビ番組の国際見本市だ。

世界中から多くのテレビ局や制作会社のバイヤーが訪れ、「これぞ」と思った作品を買いつけてゆく。私が制作したドラマ「破獄」や「ハラスメントゲーム」もここに出展され、2017年と2020年の2度にわたってバイヤーが投票してNO.1を決める「MIPCOM Buyers Award for Japanese Drama」のグランプリを獲得した。

中韓の台頭による「アニメバブルの崩壊」の影響

しかし、このMIPにも大きな変化が訪れている。これまで春におこなわれていた「MIPTV(Marche Internationale des Programmes Television)」は今年を最後になくなり、秋の「MIPCOM(Marche Internationale des Programmes Communication)」のみの開催となったのだ。これには理由がある。

コンテンツ市場成長の牽引役が、テレビ局からNetflixなどの動画配信サービスに移ったからである。MIPはテレビ局の放送サイクルに合わせて年2回開催されていた。しかし、「放送ありき」という常識が崩れてきたため、「年に2回」の意味がなくなり、MIPTVへの集客力は下がり続けた。