MIPTVはその名の通り、テレビの「番組販売」を促進する目的でおこなわれてきた。だが、近年、海外市場における番組販売の単価や成約数が伸び悩むという傾向にあった。

なかでも、クールジャパンの先陣を担っていたコンテンツの「アニメ」に関しては、制作現場の技術が向上して“日本風の”アニメを制作するようになった韓国や中国勢の台頭によって、「アニメバブルの崩壊」がささやかれている。

「ドラマ」に関しては、放送サイクルの「タイパ」が進むなかで少ない話数しか揃えられないというマイナスの状況が続いている。そんななか、新しく注目を集めているのが番組のフォーマットセールスなのである。

先を行く韓国のライツ事業

韓国はずいぶん前から“国策として”コンテンツのフォーマットセールスに力を入れてきた。人口や自国産業が少ないためコンテンツの海外展開というビジネスには血眼になっている。

国内市場が小さいため、当初から国内市場では直接製作費の一部のみを回収し、残りの直接製作費と収益は海外で得る前提で番組作りをする。今や直接製作費の60%以上を海外展開で回収するのが一般的となっている。「The Masked Singer」はその成功例と言っていいだろう。

一方、日本はまず国内市場での放映で直接製作費の100%を回収して収益を確保する前提で番組が作られる。そのうえで、国内市場である程度ヒットした作品のみ、海外輸出をおこなって追加収益を得る。したがって、コンテンツ制作の段階において、日本は国内視聴者の嗜好を重視しているのに対して、韓国は当初から海外市場を見据え、海外視聴者の嗜好を反映する傾向にある。

次に2つ目の「配信などの『放送外収入』に陰りが見えてきた」だが、ここで注目したいのが、あるデータである。他の在京民放各局に比べて、テレビ東京は全体売上のうち配信などの「ライツ事業」の売上の割合が高い。2023年度の売上においても、ライツ事業は342億4100万円と、放送事業760億9600万円の半分近くを占めている。

放送事業は制作費などがかかるためこの分を引くと、利益は164億4300万円になってしまう。だが、ライツ事業はこういった制作に関わる費用がかからないため、利益は153億8600万円を確保。ほぼ放送と同等の利益をあげている。

このようにテレビ東京においては、配信などの放送外収入が好調だが、これは裏返せば、このライツ事業の成否に会社の命運がかかっているとも言えるのだ。

「ライツ事業が頭打ちになる」という危機感

もうひとつ、見逃してはならないエビデンスがある。前述したライツ事業の売上推移である。2021年224億8200万円、22年277億1600万円、23年342億900万円というように過去2年とも前年比123%で推移していたが、24年になってほぼ前年同様という数字になった。これまで着実に前年比を伸ばしてきたテレビ東京にとって、この状況は脅威である。