睡眠時間と日常生活のパフォーマンスや健康に相関関係はあるのか。浜松医科大学名誉教授の高田明和さんは「日本での生活習慣と寿命の関係を調べたある研究で、寿命を延ばす要因は『一日7時間以上の睡眠』と『一日1時間以上の歩行』、そして『生きがいを持つこと』の3つであると報告された。7時間以上の睡眠をとれず、一日4~6時間の短い睡眠時間でも、本人が睡眠不足だと感じていなければ問題ない。逆に、長い睡眠時間を必要とする人でも、それで日々の状態に問題がなければいい」という――。

※本稿は、高田明和『20歳若返る習慣』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

不眠に苦しむ男性と目覚まし時計
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なぜ年をとると、夜になっても眠れないのか

若いときは誰でも、夜になれば当然のように眠くなるものです。

「布団に入ったらバタンキュー」だった若き日の記憶をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

夜にかぎらず、午後の授業中に眠くなり、つい机に突っ伏して眠ってしまって先生に叱られた経験のある方もいるかもしれません。

ところが不思議なことに、年をとるにつれて「眠い」という感覚が薄れてくるのです。夜、ベッドで横になっても、なぜか目が冴えてくる感じさえします。

「このままでは、朝まで眠れないのではないか」

そんな焦りから、不安が増していき、ますます眠れなくなります。毎晩、そんな辛い思いをしたくないし、放っておけば、不眠がきっかけでうつ病になってしまうこともあり得ます。

だから高齢になると、多くの人が入眠剤を用いるのです。今、入眠剤の需要はますます高まっているようですが、はたしてその対策は正しいことなのでしょうか?

睡眠薬の必要性については、のちに触れますが、基本、私は推奨してはいません。

そもそも私たちは、なぜ眠るのでしょうか?

「眠る」という習性があるのは、人間だけではありません。眠りの定義を広くとらえれば、「生きとし生けるものはすべて眠る」と言っても過言ではないでしょう。

たとえば「草木も眠る丑三つ時」という言葉がありますが、実際に、植物も眠ります。木の葉の表面には電流が流れています。これが夜と昼では異なる流れ方をしており、真夜中は電気活動が弱い。そのとき草木は眠っているのだ、と主張する研究者もいるのです。