子供の成長のために、親はどんな声をかければいいのか。『子どもを否定しない習慣』(フォレスト出版)を書いた林健太郎さんは「親は子どもに対して『どうしたい?』と意思を尋ねると良い。どんな答えが返ってきても否定せず、承認することが重要だ」という――。(第1回)
森の中の階段を登る少女
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「どうしたい?」と意見を聞いたほうがいい理由

本稿では、ご家庭の心理的安全性を確保したうえでの、「子どもの自己肯定感を伸ばす声かけ」についてお伝えします。

コーチング技術の中に、自己肯定感を高めるための魔法のフレーズがあります。それが、「あなたはどうしたい?」という問いかけです。これは相手の心の欲求に光を当てる、コーチングでは基本的かつ究極的な問いかけです。

私が日常的にサポートしている企業のリーダーの方々にこのフレーズをお伝えすると、こんな反論をしてくる方がたくさんいます。「林さん、部下に『どうしたい?』なんて聞いたら、あいつら勝手なことしか言わなくて、大変なことになっちゃいますよ!」

いえいえ、そんなことはありません。部下たちだって聞かれれば、ちゃんと「やりたいこと」を持っていますし、それは決して好き勝手なことではなく、さまざまな要因を検討して、その人なりにベストな選択肢を答えていることが多いのです。

また、それが、あなただけでは考えもしなかったような、斬新なやり方であることも少なくありません。

大事なのは、本人に自己決定権を一度渡すことです。なんでもかんでも、上の立場の人(会社なら上司、家庭なら親)が指示や命令をするのではなく、まず先に、相手の意見を発してもらう場を与えることです。そして、その中で出てきた「答え」に対して、否定せずに承認することです。

この質問と承認はセットです。この声かけと受け止め方で、相手は自分が尊重してもらえていると感じ、自己肯定感が高まっていきます。

親と娘
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子どもが「こうしたい」と即答できなくても良い

「あなたはどうしたい?」と上司が部下に聞くことで、人間関係の距離が縮まるというメリットもあります。それは子どもに対しても同じです。

以前、あるお母さんから、「子どもに『あなたはどうしたいの?』なんて聞いたって、わかるわけないじゃないですか!」と言われたことがあります。でも、そんなことはありません。

子どもにだって「こうしたい」という意思はあります。ただ、残念なことに、子どもたちはまだまだ「自分の考えを言葉にして伝える能力」が未熟で、即答が難しい場合がほとんどだと思っています。

ですので、時に「どうしたい?」と子どもに問いかけても、明確な答えが出ない場合もあるでしょう。それでもOKと考えてみてください。

問いかけに対して即答を求めるのは私たち大人の悪いクセ。一度問いかけた問いは、子どもの中で何時間も、あるいは何日もの間、自問自答の形で問われ続けます。

そして、あるとき、子どもの中で、「どうしたい?」に対する明確な意思や言葉が芽生えたりします。その瞬間が訪れるまで、大人が待つ。これができると、心理的安全性が極めて高い家庭環境が生まれていきます。

子どもの自己肯定感を上げるためには、

1.「あなたはどうしたい?」と聞く
2.子どもが考えをまとめるまで待つ
3.言葉が出てきても、出てこなくても否定せず承認する

これを日々行うだけで、自己肯定感は少しずつ、かつ着実に高まっていきます。