子どもをむやみに褒めるのは危ない
子育てのさまざまな場面に関わるようになって、プロのコーチとして気になることがあります。それは、子どものご機嫌を取ろうと思うのか、子どものことをむやみに褒める大人がいることです。
褒めること自体は悪いことではありませんので、適宜使うのはいいと思います。ただし、この褒めるという行為には、強い影響力があり、褒め方を間違ってしまうと、褒められたことしかやらないような子どもが育つリスクがあるのです。
たとえば、「偉いね」という表現を安易に使っている人、いますよね。
「お皿を片づけて、偉いね」
「泣かなくて偉いね」
でも、冷静に考えると、「偉いって何?」「早起きができない人は偉くないの?」「泣いた人は偉くないの?」ということになります。
できたことに対して、「偉いね~」「すごいね~」「うまいね~」「いい子だね〜」と褒めてばかりいると、できた、できないが評価の対象になってしまいます。
褒めることは、ポジティブな強い刺激になるため、常習性があります。そのため子どもの思考の中では、「褒められると嬉しい」→「もっと褒められたい」→「褒められることを率先してやる」というパターンが生まれやすいのです。
“褒められる喜び”に支配されてしまう
子どもはまるで乾いたスポンジに水を含ませるが如く、極めて従順な状態で褒められる喜びに支配されていきます。そして、「褒められればやるけれど、褒められなければやらない」というマインドが醸成される可能性があるのです。
このプロセスは、少しオーバーにいえば洗脳に近いもので、「褒められ中毒」になる危険性があります。「褒められ中毒」になると、より強い褒め言葉でないと反応しないようになります。
そして、そうやって育った子が成人して、ビジネスパーソンとして社会人デビューすれば、「上司から言われたことしかやらない大人」「褒められないと不安になる大人」になってしまいかねません(実際にコーチングをやっていると、「私、人に褒められたいんです」とおっしゃる方がたくさんいます)。
年齢的な目安では、乳児から幼児期に褒めるのは大切なことだと多くの育児書にも書かれていますが、子どもが小学校に入学したあたりからは、褒めすぎないように注意しましょう。
「1日に何回褒めているか?」「意味もなく褒めていないか?」を意識するようにしたいところです。
子どもが小学生になると、親戚やご近所などから、むやみに褒められる機会が増えます。そういう褒め方をする人が周りにいたら、可能なら、なるべく子どもと接触させないようにしてもいいと思います。