米政治専門紙のヒルによると、ホワイトハウスのサラ・マシューズ元報道官はMSNBCに対し、「彼(トランプ氏)は、この選挙の機を逸しつつあることを感じているのだと思います」と語った。
マシューズ氏は続けて、「彼が陰謀論にのめり込み、(中略)(民主党陣営に集う群衆をAIが生成したとする陰謀論など)明らかに簡単に反証できるものに固執し始めている理由だと思います」と、トランプ氏の焦りは目に見えて明らかだと指摘する。
メール紙によると、ホワイトハウスの元広報担当大統領補佐官であり、トランプ陣営の情報筋に近いアンソニー・スカラムーチ氏は、「彼(トランプ氏)は、ヴァンスを選んだことがひどい選択だったと理解しているのです」と述べている。
目立つ問題行動、それでもテック界は期待を寄せている
バイデン氏の撤退により、ヴァンス氏含むトランプ陣営の不利は明らかになった。カマラ・ハリス副大統領が大統領候補として脚光を浴び、選挙戦の焦点は中絶や女性の権利に移りつつある。
この状況においてトランプ氏は、女性有権者の支持を得られていない。また、ヴァンス氏がかつて固執した中絶反対の立場も、有利には働かないだろう。米政治メディアのポリティコは、ヴァンス氏が2022年、全国的な中絶禁止を求める発言をしていたと振り返る。
一方、ヴァンス氏は実業界とのつながりが強く、特にテック界から強固な支持を取り付けている。大手テック企業の独占的な商慣行を批判し、より機敏なスタートアップの優遇を提言しているためだ。ワシントン・ポスト紙によると、テック起業家のデイビッド・サックス氏や億万長者のベンチャーキャピタリストであるピーター・ティール氏らがヴァンス氏の支持を表明している。
支持者たちは、「リトル・テック」と呼ばれる小規模なテック企業をヴァンス氏が推進することで、新たなイノベーションの時代を迎えるとの期待を募らせている。
女性蔑視発言やトランプ氏支持への拙速な転向、そして偽りの貧乏生活など、ヴァンス氏には問題行動が目立つ。一方で、硬直化しつつあるアメリカのテック業界をふたたび身軽でイノベーションにあふれる場所とすべく、期待も寄せられている。
政策意図を翻してまでトランプ派に転向したヴァンス氏は、人々の賛同を得ることができるか。11月の大統領戦の行く末が注目される。