※本稿は、奥田祥子『等身大の定年後 お金・働き方・生きがい』(光文社新書)の一部を再編集したものです。
当時の選択に後悔はしていない
大学卒業後、総合職としてメーカーに就職した中本洋子さん(仮名)は4年弱で退職。翌年に27歳で結婚し、家事、育児に専念した後、第2子が小学校2年生に進級したのを機に、かつて勤務した会社の子会社に、契約社員として再就職した。そんな彼女に出会ったのは2003年、再就職から2年が過ぎた40歳の時だった。
「重々ご承知だと思いますが、私は均等法第一世代でありながら、能力を発揮することもできないまま、入社わずか数年で辞めた、よくあるパターンです。本人たちの忍耐力のなさなど世間から批判も受けましたが、私としては真剣に仕事と向き合ったつもりです。理想と現実のギャップに思い悩んだ末の決断だったんです。そんな自分の存在価値を示す手段が、結婚だった。当時の選択に後悔はしていません」
中本さんは取材開始早々、明瞭な口調でこちらをしっかりと見つめて言い切った。凛とした姿勢に少し圧倒された様子が、当時の取材ノートにも記載されている。
12年のブランク経て「再就職」
「再就職しようと思われた理由は何ですか?」
「もう一度、社会とつながりたいと思ったんです。家事、育児に専念していた期間はそれなりに充実していましたし、地域や子どもが通う幼稚園、小学校などで人との交流もありました。でも、そうした狭い範囲のコミュニティを超えた、もっと広い社会にやりがいを求めたと言いますか……。子ども2人とも小学校に通い、近くに住む母親も協力してくれ、ある程度、再び働きに出る環境が整ったので……。ただ……12年間もブランクがあったので、求職活動では苦労しました。結婚や出産を機に退職されて、再就職を希望される場合は、ブランクは数年以内がベターなようで……私の場合は、再び仕事をするかもわからないまま、子育てに追われていつの間にか時間が経ってしまっていた感じで……」