木造による復元計画が進んでいるワケ

ところで、再建された当時は、鉄筋コンクリート造は耐火性が高いだけでなく、耐久性に関しては半永久的だと考えられていたが、現実にはそうではなかった。令和元年(2019)に行われた耐震診断調査で、震度6強から7程度の振動や衝撃に見舞われた場合、倒壊または崩壊する危険性が高いという結果が出た。

このため、広島市の松井一實市長は、鉄筋コンクリート造の天守を取り壊し、あらたに木造で復元すると表明した。令和7(2025)年度まで、有識者会議を何回か重ね、どの年代に合わせて復元するか、どこまで復元するか、といった課題を整理することになっている。

令和2年(2020)の時点での試算では、木造による復元には86億円かかるとされている。その後、費用はさらに高騰していると思われる。技術的な問題に加えて、それをどうやって賄うのか、難題ではある。

しかし、失われた天守のなかでも、とりわけ価値が高かった建造物である。忌まわしい原爆の記憶を克服する一助としても、戦前の雄姿が木造で精密によみがえる日が訪れることを願わざるをえない。

明治時代の絵葉書に描かれた「大天守」
明治時代の絵葉書に描かれた「大天守」(写真=PD-Japan-oldphoto/Wikimedia Commons
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