ミサイル生産能力の重要性を見せつけた
イギリス国防省は、ロシア陸軍は開戦から24年1月時点までに2600両以上の主力戦車を失ったと見ています。しかし同時に、1カ月あたり少なくとも100両の戦車を生産し損害を埋め合わせることができている可能性があるとして、地上部隊の攻撃能力は維持されていると結論づけています。
また別の分析では、射程が350キロの長距離ミサイルも月に115―130発程度生産していると見られ、ウクライナ戦争前よりもミサイル生産能力は増強されている可能性があります。
この戦争は、特に攻撃や防御のためのミサイルをどれだけ多く保有し、どれだけ多く生産できるかが決定的に重要であることを世界に見せつけました。ウクライナは長い間、慢性的なミサイル不足に悩まされることになりました。
ウクライナへの最大の武器供給国はアメリカですが、ウクライナに大量の兵器を提供した結果、国防産業でプライマリーサプライヤーと呼ばれる大手五社(ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、ボーイング、ジェネラル・ダイナミクス、RTX)の生産体制は逼迫しました。
弾薬だけでなく、当然、兵器の生産体制も重要であり、戦争が長期化するにつれ、こうした物量面でのロシアのウクライナに対する優位が明らかになっていきました。ウクライナはアメリカ議会が2024年4月に9兆4000億円の新たな軍事支援策を可決する頃までに、非常に厳しい戦いを強いられるようになっていました。
ロシアが得意とする「長期消耗戦」が力を発揮
明らかになった現実は、時間が経つにつれ、ロシアの長期消耗戦という伝統的な戦略が力を発揮したということです。かつてナチス・ドイツと戦った独ソ戦において、ソ連軍は膨大な犠牲を出しながらも長期消耗戦を戦い抜き、電撃戦で短期的な勝利を目指したドイツ軍を打ち破っています。ウクライナ戦争は、ロシアが長く苦しい戦争に慣れた国家であることを各国に思い出させています。
一方のウクライナ軍としては、限られた武器・弾薬をどう効果的に使うかが重要になっていました。戦争ではもはや物量や兵器のレベルだけではなく、戦場に効率的に流通させるシステムやソフトウェアが重要であることも浮き彫りになりました。
ウクライナ軍はLOGFAS(Logistics Functional Area Services)データベースというNATOの兵站管理システムを導入しています。これにより、具体的にどの兵器が戦場のどこで稼働し、修理が必要なのはどれかを把握して、兵器をある程度は効率的に運用できているようです。