人気アナでも「企業の一社員」に過ぎない

一般的に企業が不祥事を起こした際は、対外的な情報発信は広報部門が担う。経営レベルの深刻な問題でなければ、メディア対応も広報部門で行うことが多い。問題が経営レベルまで及ぶ場合や、極度に深刻な事態の場合は、取締役や、場合によっては社長が謝罪をしたり、釈明を行う。

いずれにしても、当事者でも、広報部門でも、経営者でもない一般社員が表に出て謝罪や釈明を行ったりすることは、通常はないし、そうしたところで事態が収束することもない。

子供が問題を起こしたら親が謝る。社員が問題を起こしたら上司が謝る。広報に限らず、立場が上の人間が謝罪するものだし、そうすることによって、相手側の怒りも収まりやすくなる。

テレビ局の看板的な存在感を持つ人気アナウンサーであったとしても、彼・彼女が問題の当事者であるわけではない。いくら有名であっても「企業の一社員」に過ぎない(日テレの水卜アナについては管理職への昇進が発表された。水卜アナが今後どういう役割を担うかはさておき、アナウンサーを早期に役職に就かせて、対外広報の役割も担わせるというやり方はありそうだ)。

つまり、視聴者には「このアナウンサーはどの立場で謝罪をしているのか」という疑念が付きまとうことになる。

筆者自身も、テレビ番組内でのアナウンサーの発言を聞いていて、「この人は会社(テレビ局)としての意見を言っているのだろうか? それとも、個人的な意見を言っているのだろうか?」と疑問に思ったことが多々ある。

では、なぜテレビ局はアナウンサーに謝罪をさせてしまうのか。

お台場にあるフジテレビ本社
写真=iStock.com/TkKurikawa
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テレビ局の持つ「特殊事情」

テレビ局の問題に対して、アナウンサーが矢面に立って謝罪するのは、次のようなテレビ局ならではの特殊事情がある。

1. 情報発信自体を生業なりわいとしており、放送事故レベルの日々のトラブルには、放送内で謝罪した方が有効である

2.アナウンサーが企業と顧客(視聴者)との日常的な接点となっている

3.テレビ局には定例社長会見があり、そこで説明の機会が設けられる

筆者は、これらの特殊事情があるにせよ、アナウンサーが謝罪をし続けることが適切かどうかについては、議論の余地があるように思う。