「とりあえずアナウンサーに謝らせよう」という空気感

テレビ局に限らず、メディアに対する批判は日々起きている。一部のSNSユーザー(さらには一部のメディア)からすると、キー局は「特権階級」で、その社長は「特権階級のトップ」であり、叩きたくなる存在でもある。実際、定例社長会見でのテレビ局社長の発言は、概してSNSやネットメディアで叩かれている。

正当なものもあるが、不当なもの、過剰なものも少なくない。

フジテレビの定例社長会見では、アナウンサーによる謝罪の後に、港浩一社長が大谷選手の新居報道について謝罪を行った。しかしながら、SNS上では、「港社長の自宅住所を公開しろ」とか、「大谷選手の新居を無償で用意しろ」といった厳しい批判が寄せられている。

大谷翔平、ドジャース、米大リーグ、OHTANITODAY=2024年7月19日、米国
写真提供=共同通信社
大谷翔平、ドジャース、米大リーグ、OHTANITODAY=2024年7月19日、米国

大谷選手の取材は過剰だったとは思うが、「報道の自由」「取材の自由」という大義名分を鑑みると、「批判を受けたから謝る」というのが必ずしも適切とは限らない。

「24時間テレビ」の寄付金着服問題については、日本テレビではなく系列局(日本テレビが筆頭株主であるが)が行った行為でもあり、「どこまで日本テレビに責任があるのか?」という問題もある。

例えば、2015年に起きたタカタのエアバッグ問題や、マンション傾斜問題については、一義的な責任はメーカー側(タカタや旭化成建材)にあるとされた。タカタのエアバッグを搭載した自動車を販売したホンダ、傾斜マンションを販売した三井不動産レジデンシャルの親会社の三井不動産、旭化成建材の親会社の旭化成のいずれも謝罪は行っているものの、親会社に対する激しい責任追及の声は見られなかった。

「24時間テレビ」は何かと批判を集めている状況でもあるから、「とりあえずアナウンサーが謝った」ということなのかもしれない。しかし、それで視聴者の納得が得られたかといえば疑問が残る。

自社メディアを持つがゆえの「おごり」

余談だが、吉本興業の元専務取締役、元広報担当で「謝罪マスター」と呼ばれた竹中功さんは、吉本興業で芸人の謝罪会見を取り仕切るだけでなく、芸人と一緒に記者会見で謝罪を行い、多くの吉本興業の危機を乗り越えてきた。

闇営業問題が起きた時点で、竹中さんは同社を退社していた。竹中さんが会社に残って対応をしていれば、この問題ももっとうまく収まったのではないかと思う。

当事者と責任者が適切な場所を設けて誠意をもって謝罪すれば、視聴者の納得も得やすくなる。

テレビ局は、自社でメディアを持っていることにかまけ、こうした場を設けることを怠ってきた。アナウンサーと定例社長会見で代替してしまっているというのが実態だ。