「デカルト」「奥の細道」で時代の本質を掴め
エコール資生堂には様々な研修があり、その一貫として、執行役員などに、哲学や文学などのプログラムを用意している。6日間、会場に缶詰めとなり、デカルトや奥の細道について専門家の講義を受け、侃々諤々の議論を戦わせる。
何事にも即効性が求められる現代において、こうした人材育成は一見、無駄と思われがちだろう。しかし、私はそうは考えない。
これは私の経営に対する考え方とも関わる問題であり、将来経営者を目指す人たちにとっても重要なことなのだが、経営は3年程度の中期的なスパンで考えると同時に、10年程度の長期的な視点からも考えないと判断を誤る。目先の変化に目を奪われていると、時代潮流の底にある本質的な変化を見逃してしまうからだ。
では、ここ10年あまりのうちに起きた本質的な変化とは何かといえば、グローバル化である。そして、グローバル化の波がビジネスマンに要請するものは何かといえば、それは多様性への対応力なのである。哲学や文学を学ぶ意図も、そこにある。
例えば、経理や人事に携わる人たちが、日頃触れることのない哲学や文学に真剣に取り組むことで、多様性への対応力を鍛えることになる。一見時間の無駄に思えることが、まわりまわって、いままさに必要とされている能力と確実にリンクしているのである。
人材の育成には時間がかかる。しかしその時間を惜しむと、多様性への対応という、大きな課題に即応していくことができなくなるのだ。
最後は、「大切な経営資源であるブランドを磨き直す」という夢である。経営資源を集中して太く強いブランドをつくり、お客様に支持されるロングセラーブランドをいくつ持てるか――。