これからの日本の政治はどうなるのか。ジャーナリストの鮫島浩さんは「東京都知事選で石丸伸二氏は無党派層を引き込む巧みな選挙戦略で165万票を獲得した。この選挙戦略は都知事選後も続いている。自民や立民などの各党は、このままでは総選挙で想像以上のしっぺ返しを受けることになるだろう」という――。
落選が確実となり、記者会見する石丸伸二氏=2024年7月7日午後、東京都新宿区
写真=時事通信フォト
落選が確実となり、記者会見する石丸伸二氏=2024年7月7日午後、東京都新宿区

都知事選は「延長戦」に突入した

七夕に投開票された東京都知事選は、自民党と公明党のステルス支援を受けた現職の小池百合子氏が当選したことよりも、立憲民主党と共産党が全面支援した蓮舫氏が3位に沈み、代わってYouTubeなどのSNSで人気のある前安芸高田市長の石丸伸二氏が2位に躍り出たことに関心が集まった。

勝者の小池氏の存在感は霞み、敗者の蓮舫氏と政界の風雲児として台頭した石丸氏に非難と称賛が飛び交う異例の延長線に突入している。

自民党の裏金事件後、4月の衆院3補選と5月の静岡県知事選に4連勝していた立憲民主党の勢いは完全に止まり、政権交代の機運は一気に萎む様相だ。

自民党は同時に行われた都議補選で2勝6敗と惨敗した。安倍派5人衆のひとりで裏金議員の代表格である萩生田光一都連会長(前政調会長)の地元・八王子でも敗北したことは、裏金事件の逆風がやんでいないことを示した。

既存政党への不信が「政治屋の一掃」を掲げた石丸氏への期待感を膨らませ、自民・立憲の二大政党がともに沈んで政界勢力図が塗り替わる気配さえ漂い始めている。石丸氏が橋下徹・元大阪府知事らに新党旗揚げを促し、自らも参加する可能性を示唆したことで、新党結成への期待感も芽生え始めた。

現下の情勢は、自民党不信が野党第1党の民主党を押し上げて政権交代が起きた2009年総選挙よりも、自民党に加えて野党第1党の社会党への不信も募り、新党が次々に旗揚げして政界再編に発展した1993年総選挙の前夜に似ている。蓮舫氏の惨敗と石丸氏の躍進が、永田町の風景を一変させたといっていい。

今後の政治の行方を占うには、(1)小池氏はなぜ勝利したのか、(2)蓮舫氏はなぜ惨敗したのか、(3)石丸氏はなぜ躍進したのか――をそれぞれ丁寧に分析することが不可欠である。