やはり強かった…小池氏を支えた自公・労組の組織票
小池氏は前回知事選から74万票を減らしたものの、自民党に近い業界団体や公明党の支持母体である創価学会、連合傘下の労組などの組織票を手堅く固めて291万票を集め、逃げ切った。
8年前の知事選では反自民を掲げて当選したものの、2期8年の都政で東京五輪や都心再開発といった国策プロジェクトを進めるなかで、二階俊博元幹事長や萩生田氏を窓口に自民党と和解し、自公与党と一体化する都政に変節した。
樹木の大量伐採に坂本龍一氏ら著名人が続々と反対を表明した明治神宮外苑の再開発では、三井不動産など再開発業者に都庁職員が大量に天下っている問題や、小池氏自身も政治資金パーティー券を購入してもらっている疑惑が浮上。自民党の森喜朗元首相や萩生田氏が再開発案について都幹部から説明を受けていたことも明らかとなり、「政官業の癒着」の構造が浮かび上がっている。
自民党の裏金事件が発覚した後は小池都政への批判も強まり、そこへ小池氏自身の学歴詐称疑惑の再燃が追い打ちをかけた。小池氏は独自候補を擁立した4月の目黒区長選や衆院東京15区補選で敗北し、選挙に強い「小池神話」は崩壊。JX通信社が5月に行ったネット調査では、小池都政の「継続」を求める人は24%にとどまり、「交代」を求める人は42%にのぼった。小池氏は都知事選への出馬を明言せず、不出馬説も流れるほど一時は追い込まれていたのである。
小池氏は5月29日の都議会初日に出馬表明する意向を固めたものの、その直前に蓮舫氏が「自民党政権の延命に手を貸す小池都政をリセットする」と宣言して電撃的に出馬表明し、先手を打たれた。小池氏は出馬表明を先送りし、勝てるかどうかを慎重に見極めた。蓮舫氏と石丸氏を相手とする三つ巴の対決構図なら逃げ切れるという選挙情勢調査を踏まえ、出馬を最終決断したのだ。
「自民党は許せないが、小池都政は別」
小池氏の勝因は、①自民党の推薦を表向き受けずに裏で支援を受ける「ステルス選挙」に徹したこと、②石丸氏出馬でアンチ小池票が分散したこと、③リベラル層に絶大な人気があるものの保守層や無党派層には拒絶感も強い蓮舫氏を立憲民主党が対抗馬として擁立したこと――の3点にあると私は分析している。
ANN出口調査によると、自民党の裏金事件を「大いに重視した」と回答した人の2割以上が小池氏に投票した。①の「ステルス選挙」を徹底したことで自民党への逆風が小池氏を直撃する事態を避けることができた。「自民党は許せないが、小池都政は別」と考えた都民が少なからずいたということだ。小池都政と自民党を切り離す世論対策に成功したといっていい。
都知事選で現職は負けたことがない。都の一般会計予算は8兆円を超え、都知事が自由に使い道を決めることができるお金は首相を上回ると言われている。しかも円安による株高・不動産高で都心に本社を置く企業は潤い、今年度の都税収入は過去最多にのぼる。小池氏は潤沢な予算を最大限投入して小池都政へのシンパを増やしてきた。都知事の絶大な権力が現職有利の最大の理由だ。