2億円出さないとファミリー向けは買えない
私は1990年代前半から勝どきに住んでいる。生まれも育ちも勝どき出身。当時は、人気がある街とはお世辞にもいえないエリアで、2000年代に入るまで、「勝どき」の地名を知っている人もあまりいなかった。
今では、「最寄り駅が勝どき」といえば、多くの人から「タワマンに住んでいるんだな」と思われてしまう。勝どき周辺には10棟以上のタワマンがある。たとえば勝どきビュータワー(総戸数719戸)、勝どきザ・タワー(総戸数1434戸)、パークタワー勝どき(総戸数2786戸)などがよく知られている。
こうしたタワマンは価格が高騰している。2023年から入居が始まっている人気のパークタワー勝どきは、2024年6月現在、70m2台後半の部屋は2億円超えで、90m2を超えると3億円台の部屋もある。タワマン以外のマンションであっても、たとえば築22年のセザールベイサイド勝どき(小規模マンション)は、76m2で9980万円となっている。
そんな勝どきエリアでも、2000年ごろまではファミリーマンションが2000万円台で購入できた。大きなきっかけは都営大江戸線の勝どき駅の完成だ。
かつては2000万円台で購入できる時代があった
勝どき駅が完成するまで、地下鉄の最寄り駅は、築地駅(日比谷線)か月島駅(有楽町線)。勝どき駅がある地点から橋を渡る必要もあり、各駅のホームに着くまでは少なくとも徒歩10分以上はかかった。
現在、勝どきビュータワーが建っている場所は、かつては長屋が立ち並び、下町の雰囲気を感じられるエリアだった。それこそ、月島を背に少し歩くと木造住宅も密集していたほどだ。
それが新駅の完成で、年を追うごとに街が変化していった。
勝どきエリアに最初に建ったタワマンは、2008年に完成したTHE TOKYO TOWERSだ。何もなかった空き地に大規模タワマン(総戸数2794戸)ができるので、住民の間でも話題になった。その頃は、このエリアの発展に期待していくというワクワク感もあまりなく、まさかこんなにタワマンが増えるとは想像もできなかったというのが正直な感想だ。
シンボリックなタワマンは、勝どき駅直通の勝どきビュータワー(2010年)、THE TOKYO TOWERSの清澄通りを挟んだ向かい側にできた勝どきザ・タワー(2016年)などがある。タワマン街のイメージがつき、憧れを持たれるようなブランド化が感じられるようになったのは勝どきザ・タワーができたあたりだろうか。
そして極めつきは2023年に完成したパークタワー勝どきの登場。今の湾岸タワマンの価格上昇の中心地といっても決して過言ではない、勝どきエリアの旗振り役的存在だ。