※本稿は、山下努『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。
40年ぶりの新型不動産バブル
東京や大阪の大都心、東京湾岸エリアのタワマンを中心に、新築も中古もマンション価格の上昇が止まらなくなっている。
2023年の東京都区部の新築マンション平均価格(不動産経済研究所調べ)は、前年比39.4%アップして1億1483万円となり、はじめて1億円の大台を超えた。
23区の新築マンションは、23年に前年より3000万円以上も値上がりした。
これは結論からいえば、40年ぶりに近い新型の不動産バブルである(本書の第3章で詳しく分析する)。
中古物件も、大きく値上がりするエリアは限られている。人件費や資材など建築費の高騰をダイレクトに反映する新築が供給できるエリアが中心だ。
長期の超金融緩和にコロナ禍が重なったうえ、インフレがやってきた。
長年の日銀政策やコロナ後の財政出動で富裕層に追い風が吹き、いまの日本は「お金持ちだけが黙っていても得する時代」に入ってしまった。
高級品に人気が集まり、もうかるのはマンションばかりでなく、自動車や時計、アパレル、ブランド品など、幅広い商品群で見られる現象だ。
もちろん、そうした陰にはマンション供給業者がリーマンショックで大量に淘汰され、「メジャーセブン」と呼ばれる大手7社(住友不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、東急不動産、野村不動産、東京建物、大京)が供給を担っているからだ。
市場には大手の深謀遠慮が働き、タワマン市場が大きく活性化する方向が目指されている。
一生住むなら避けたほうがいいかもしれないが、最長15年程度で売ることを考えれば、利回りのいいのが「タワマン」だ。
今後、建築費が下がる見通しはあるのか
デフレ時代が終わり、人件費や材料費は今後も下がる見通しはないとすれば、「マンションの原価のかなりの部分をしめる建築費は、今後も下がる兆しがない」という見方も強い。
建設物価調査会の調べでは、東京のマンション建築費は6カ月連続で過去最高を記録した(2024年1月発表)。水道設備やコンクリート杭の値段が上がってコスト増につながった。
建設用の鋼材は、原材料高や物流費、人件費の上昇を背景に、メーカー各社が相次いで値上げした。
23年12月の東京の工事原価は、前年同期を6%上回った。
人件費の上昇のなか、都内で再開発ラッシュが続いているためだ。