東京23区のマンションは1億円時代に突入した。不動産バブルに調整は入るのか。経済ジャーナリストの山下努さんは「現在の不動産と株のバブルは日銀が過激な金融政策で演出した帰結だが、それこそが『日銀バブル』だと判断されれば、お金が流れ込んだ不動産や株の価格は調整を受ける」という――。

※本稿は、山下努『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。

高層ビル
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東京23区の不動産価格は別世界

前回のバブルも超えた「23区の新築マンション平均価格が2023年の通年価格で1億円突破」の知らせは、将来の円通貨の暴落懸念(悪性インフレ、財政インフレを警戒)を背景に起きている。

また、4万円を突破し、史上最高値を更新した日経平均株価が上がると、その「資産効果」でマンションなどの投資対象にもなる不動産価格も上がる。

株の上昇によって資産が増えた富裕層が、市場に厚みがあり流動性が高く収益が見込まれるタワーマンションなどを買いに動くのだ。

不動産と株は資産市場のメインの受け皿だが、価格の形成もバブルの情勢も、そのバブルの崩壊にも互いに連動性がある。

株式が上がるだけで、株で含み益を得た形の投資家に「資産効果」が生まれ、マンションにも投資先を広げる。

23区は他エリアと別世界になっている。

超高層とすぐわかる「タワー」と名がつけば売れるし、値上がり率も高い。

20階建て以下の中小型物件、「億ション」と呼べない中低層マンション(中低層でも一戸2億円を超す高級物件は別)は、市場に厚みがなく富裕層のマネーが十分に入ってこないので、購買(投資対象)にしない人もいる。

東京では、オフィスビルを中心に空前の「タワー」建設ラッシュだ。

「タワー」と名づけたほうが、超高層とわかり、値上がりしやすいと歓迎される。

大型再開発には、高層階が一戸数億円から数十億円以上の超高級マンションが併設されるケースが増えている。

都心再開発のカラクリ

再開発も止まらない。

再開発でもうかるエリアは都心の未利用地等にシフトし、それは公園や学校など、高さ・容積率が未利用の公有地が多い。

デベロッパーは公園を含めたエリアを難なく商業用地に「変換」してしまう。

計画と資金を民間に頼る自治体が事実上、自治体の事業を「丸投げ」してしまうからだ。それは建物が古くなって建替えのときに起こりやすい。

土地をまとめて大規模に開発し、行政が求めるMICE(会議、学会、研修、展示会など、集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称)の機能を発揮できる施設を収容すると、再開発計画には巨額の補助金が出る。さらに建物の高さ規制の大幅な緩和、建物を大きく高くできる容積率のボーナスといった規制緩和が与えられる。

箱物であるホールやホテルなど、行政が指定した用途の建物を設ければ、簡単に容積率を上げられる時代だ。外国人や富裕層は、こうした「希少価値があって値上がり確実な超高額マンション」に好んで投資する。

また、今後5年間のオフィス床の新規供給面積の5割が港区に集中し、ますます都心回帰が進む。それに合わせ住宅の都心需要も伸びる。

23区の不動産会社は、需要に応えるだけの都心や湾岸マンションの中古の玉がないので、マンション「買い取り」(売り先を確保せずに業者が自分で買う行為)に走る。

ますます全国の新築・中古住宅の市場事情とかけ離れるばかりだ。

円安効果で、高値で買う外国人が市場を牽引しているので、2年前の水準で見れば、業者も太っ腹な値段で、自分で買っている。