自分自身より他人を優先する人は危ない

私もこのループに巻き込まれ、「辞めるなんて、どうせ考えたって無理に決まっている」と何度も自分に言い聞かせて無理やり自分を納得させていた。他人を優先して自分の心や体を後回しにしてしまうことが、長い間続くと人はどんどん追い込まれて、やがて危険な状態になる。

いくら何でも死ぬことまでは考えたことはないという人も多いと思うが、長期間ストレス状態が続くと過労死や過労自殺は、他人事ではなく誰にでも起こり得ることだと考えてほしい。

このような状態の中で難しいことだが、自分の命と人生を最優先に考えてほしい。私もこのまま仕事を続けたら、うつ病や精神疾患になることは容易に想像できた。

さすがに自殺までは考えなかったが、深夜まで仕事をして疲れ切った帰り路、電車を待つときに「今、飛び込んだら楽になるのになぁ」と思うことが何度となくあった。

家族のことを考えれば不安は尽きなかったが、最後の最後は「自分自身を守るため」に会社を辞める決断ができた。もう逃げるほかなかったというのが正しい表現かもしれない。

退職願
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長時間労働は視野を暗く狭くする

これは私自身の経験だが、追い込まれているときは、視野が極端に狭くなっている。ほかの道を選べるにもかかわらず、暗闇の中で狭くて細い道しか見えない、もうこの道を歩いて行くしかないと感じていた。

だが日本は民主主義国家だから1本の道しかないなんてことはあり得ない。自分の未来には、いくつもの道があって、選択して進んでいく、すなわち「未来は選べる」わけだ。長時間労働は、思考力を失い視野を暗く狭くする。そのため自分の歩んでいく道は、これしかないと思い込んでしまうという危険な状態だ。

過労で追いつめられて自殺した人の話は今でもよくニュースになる。以前は、「なぜ死ぬ前に会社を辞めないの?」「仕事よりも命の方が大事なのに」と率直にそう思いながらニュースを見ていたが、いざ自分がその状況に追い込まれると認識が一変した。過度のストレスを受け続けると、逃げるという選択肢が見えなくなるのだ。