「いつも同じ」は営業にとって強い武器になる

最初に私が、顧客の習慣になることを意識したのは、『メルセデス・ベンツに乗るということ』という本を読んだことがきっかけでした。

当時、メルセデス・ベンツは、新しいモデルに乗り換えても、メーターやパネル類の場所が同じでした。

何代にわたって乗り換えても、操作のストレスがなく、メルセデス・ベンツしか運転できないという状況をつくり、顧客を囲いこんでいるというのです。

同じであることが価値になる……目からうろこでした。

それまでの私は、一見すると地味にも見える、日々の訪問活動に一種のマンネリを感じていました。もっと、すごいソリューションをしないと、他の業者と差別化できない、そんな焦りも感じていました。

伊庭正康『トップ営業の気くばり 「あなたから買いたい」と言われる47の秘訣』(明日香出版社)
伊庭正康『トップ営業の気くばり 「あなたから買いたい」と言われる47の秘訣』(明日香出版社)

でも、お客様が望んでいることは、

「いつもと一緒であること」「すべてを言わずともわかってくれること」、

そんな基本的なことであると気付かされたのです。

確かに、考えてみるとそうです。

あなたの会社でも営業担当が変わる時、多くのお客様はストレスを感じませんか。

あれは、「習慣」が崩される不安があるからです。

なので、もしあなたが、かつての私のように営業活動にマンネリを感じ、焦ることがあれば、こう考えてみてはいかがでしょう。

「顧客の習慣に入る活動をしているのだ」と。

元P&GのCEO、アラン・ラフリー氏は、そのことを「顧客習慣」と言いました。

そして、彼はこう続けます。

「顧客は、差別化など求めていない。いつもと一緒であること、変わらないことが大事なのだ」

あなたの地味にも思える活動は、お客様にとってかけがえのない活動なのです。

「今日はちょっとラクをしようかな……」
「ちょっと手を抜いてもいいかな……」
「こんな単純なこと嫌だな……」

と自分に負けそうになった時、お客様の習慣を崩してはいけないな……と考えてみてください。意外とふんばれます。

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