攻撃に返す言葉は「おっしゃる通り」

コミュニケーションスキルを説いた本などには、悪意に対して「こう言い返せばよい」という効果的なフレーズが幾つも紹介されています。ですが、それらをすべて暗記しておき、ここぞというときに思い出して繰り出すのは大変です。実際の場面では相手に言われ「うっ」と詰まった瞬間に、勝負は決してしまいます。

そこで、ここでは咄嗟に使えるとっておきのテクニックを紹介します。まずは「承認」を用いたレスポンスです。例えば「おまえはばかか!」と言われたら「はい、ばかです」「おっしゃる通り」と返します。

攻撃的な言葉を投げつけられると、つい「いいえ」「しかし」「ですが」等の否定的な言葉で防御したくなりますが、それを言った瞬間に加害者vs被害者の図式が成立します。相手の目的は、言葉であなたに害を与えることなので、相手の思うツボになってしまうのです。

ところが、攻撃的な言葉を投げたのにあなたがうろたえる素振りもなく「そうなんですよ」と応じた瞬間に、相手の思惑がはずれます。相手が怯んだところで、すかさず「どうしたらいいと思います?」と質問してください。さらに畳み掛けて「教えてください!」と教えを乞う姿勢を見せます。これに「ウッ」と詰まるのは相手のほうです。

「おまえはこんな簡単なこともできないなんて、ばかじゃないの?」
「はい。自分でもばかだと思います。どうしたらいいでしょうか。ご教示ください」
「そんなのは自分で考えろ!」
「はい。考えてはみたのですが、どうしてもわからないんです。どうか助けると思って教えてください」

これを何度も繰り返すのです。決して反抗的な態度を見せたり、不貞腐れた感じで言ってはいけません。悪びれず屈託なく、ポジティブなアドバイスがもらえるかもしれないワクワク感を発しながら聞いてください。「そんな演技はできないよ」という方も、ご心配なく。ちょっとしたコツがあるのです。

背筋を伸ばし、笑顔で相手の左目の中を見る

まず「鎖骨の位置」を通常より10センチほど上げてください。こうすると自然と背筋が伸び、胸を張った姿勢になります。頭蓋と肋骨に声が響いて明るく通る声になります。心の中には不安と恐怖が渦巻いていても、それを相手に悟られないよう“声で演じる”ことを、私は「ポーカーボイス」と呼んでいます。

次に口の形ですが、上の歯がすべて見える逆三角形をキープしてください(MJ型※)。この口の形で話すと自然と目尻が下がり、笑顔をつくれます。笑顔は心に余裕があるときに出るものですが、逆もしかりで笑顔をつくることで心に余裕が生まれます。また、MJ型の口から発せられる声は自信と高いエネルギーがこもった、明るく高く通る声になります。

※MJ型:民間放送テレビ局の女性アナウンサー(Minpou-no-Joshiana)がバラエティ番組などで司会を行う際の口の形から命名された。

最後に視線です。人と話すのが苦手な人は、無意識に眉間や鼻に目をやっています。相手に顔を向けながら、視線の直撃を避けようとする本能がそうさせるのだと思います。かといって両目をガン見してしまうと、こんどは相手の敵対本能を刺激してしまいます。

視線を向ける先は「相手の左目の瞳の中にある光」です。瞳の中の光を見ようとすると少しのぞき込むような感じになりますから、相手は「見られている」ことを強く意識します。しかも、左目は感性を司る右脳と繋がっています。これは私の推論ですが、相手からすれば真意を探られているような気持ちになるのではないでしょうか。

悪意を向けられがちな人は、うつむき加減で伏し目がちに、言われても言い返さず、ダメージを受けていることを相手に見せてしまいます。

それが嬉しくてますますエスカレートしているので、こうした堂々とした態度を見せることで「いつもとは具合が違うんだぞ」と感じさせることができます。

簡単に縁切りできない嫌味な相手の悪意を無力化し、嫌われないよう言い返す