全国の自治体の約4割が消滅危機…必ず起こる前兆現象とは
全国の自治体のおよそ4割が消滅――。民間の有識者でつくる「人口戦略会議」は4月、こんな衝撃的な報告書を発表した。そうした「消滅自治体」に、必ず点在するのが寺や神社などの伝統宗教施設である。寺社は地域が消滅する前に無住化する。そのため、地方消滅の前兆現象として捉えることができる。筆者が2015年に「寺院消滅」を指摘したが、現在はどうなっているのか。
人口戦略会議の調査では2050年には20〜30代の若年女性が半減する自治体が744にも及び、その後も人口減少に歯止めがかからなければ将来的に「消滅」する可能性があるという。
実は10年前にも同様の調査が実施されていた。日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)が2014年に実施したものだ。この時には「消滅可能性都市」896市区町村(全国の自治体の49.8%が消滅)のリストが発表され、社会に衝撃を与えた。10年ぶりとなる今回の調査では、やや改善がみられたものの、依然として人口減少にあえぐ地方都市の実情を示している。
特に東北地方が厳しい。東北に215ある自治体のうち、77%にあたる165が「消滅可能性自治体」に認定された。そして、東北に限らず、特に「構造的に深刻な自治体」としては、群馬県・草津町や千葉県・銚子町、神奈川県・箱根町、静岡県・熱海市など23の自治体が挙げられている。
消滅可能性都市には、決まって寺院や神社が存在する。多くの寺社は17世紀初頭以前(江戸時代初期)に開かれたものであり、その後もずっと地域社会に残り続けている。寺院は、檀家と先祖代々の墓所を抱えているので、簡単に寺を閉じたり、都市部に移転したりすることはできない。したがって、人口減少などの社会環境の変化を定点観測する際の、格好のバロメータといえる。
2014年の日本創成会議の調査後、國學院大学神道文化学部教授(当時)の石井研士氏は「都市が消滅するのに、寺や神社だけが生き残ることはあり得ない」と指摘し、「消滅可能性都市」に宗教法人がどれだけ含まれるかを試算した。すると、全17万6670法人のうち約35.6%にあたる6万2971法人が「消滅可能性」にあることが分かった。
この段階での、伝統仏教教団の2040年における「消滅割合」は次の通りであった。高野山真言宗45.5%、曹洞宗42.1%、天台宗35.8%、臨済宗妙心寺派34.7%、日蓮宗34.3%、浄土真宗本願寺派32%、真宗大谷派28.5%、浄土宗25.2%、黄檗宗22.6%――。
特に、東北に多くの寺院を抱える曹洞宗や、北陸に勢力をもつ浄土真宗系宗派、さらには山岳仏教である高野山真言宗などが、消滅割合が大きかった。ちなみに神社本庁所属の神社では、41%の消滅割合となっている。