空き寺、空き神社の増加で地域コミュニティーの機能が喪失
筆者が「寺院消滅」を予測してから、かれこれ9年が経過する。「地方消滅」の調査のように、少しでも改善が見られるのだろうか。実は、寺院消滅は、前回の予測以上に消滅が進んでいると考えられる。
例えば日本最大の宗派、曹洞宗は約1万4600カ寺を抱えるが、既に全体の約25%にあたる約3600カ寺が空き寺になっていると思われる。筆者の所属宗派である浄土宗は全国に約7000カ寺を抱えるものの、全体の21%程度(約1470カ寺)が空き寺である。
空き寺の数は今後、ますます増えていくことは必至だ。そう言える根拠のひとつに、仏教教団が実施する後継者調査がある。国内で2番目の規模、約1万500カ寺を擁する浄土真宗本願寺派は2021年の宗勢調査で「後継者が決まっている」と回答した割合が44%にとどまっている。浄土宗で後継者がいる割合は52%、日蓮宗では55%である。その他の宗派も同水準であると考えてよいだろう。
つまり、このまま後継者が見つからなければ、その寺は無住になることを意味する。すでに「空き寺予備軍」がひしめいている状態なのだ。
後継者不在の状況を、寺院消滅の将来予測に当てはめてみる。すると、2040年には全体の35%にあたる2万7000カ寺が無住(正住寺院が約5万カ寺)に、現在の住職の代替りが完了する2060(令和42)年ごろには、無住寺院が全体の45%にあたる約3万5000カ寺(正住寺院が約4万2000カ寺)まで増えてしまうと予測できる。
空き寺(や、空き神社)の増加は、祭りや葬送といった地域コミュニティーを結びつけてきた機能の喪失につながる。ますます、人口の流出が加速する悪循環に入ってしまう。地方創生には寺院の再生が不可欠だと筆者は考える。がしかし、その具体的な方法論は、見いだせずにいるのが正直なところだ。