店あれど、買い物できず…
高齢者の4人に1人が、食料品の購入が困難な「買い物難民」となっている。農林水産省の農林水産政策研究所がこのほど公表した推計は、衝撃的な実態を明らかにした。
同研究所は店舗まで500メートル以上かつ自動車利用困難な65歳以上を食料品アクセス困難人口と定義しているが、2020年国勢調査などのデータを基にカウントしたところ、対象者は904万3000人に上ったのだ。900万人を突破したのは初めて。高齢者人口に占める割合は、なんと25.6%であった。
前回(2015年)の推計とは集計方法が一部異なるためデータに連続性はないが、単純に比較するならば9.7%増だ。
店はあれども、買い物ができない。今、日本で何が起こっているのか。
今回の推計結果には2つの大きな特徴が見られ、その背景から買い物難民が増えている要因が浮かび上がる。
1つは、75歳以上が565万8000人(同人口の31.0%)で買い物難民全体の62.6%を占めていることだ。
70代後半や80代になると、現役時代のような収入を得られなくなる人が大半であり、マイカーの所持が困難となる人が増える。運動機能の低下で運転が難しくなり免許証を自主返納したりする人や、買い物どころか外出そのものが難しくなる人も多くなる。厚労省は2040年に高齢者の4人に1人が認知症になる可能性をも示している。
買い物を頼めない独居世帯
年を重ねるほど買い物難民リスクが高まることは当然ではあるが、問題は昔に比べて独居世帯が多くなったことだ。
三世代同居が一般的だった時代には、大半の高齢者は食料品だけでなく日用品購入を子供世代に委ねていた。ところが、70代後半や80代になっても自分自身で買いに行かざるを得ない人が増加したということだ。「今晩の食事の買い物、お願いね」と頼める家族がいないのである。
日本の高齢化スピードは速く、75歳以上どころか80歳以上が増え続けている。
総務省のデータ(2023年9月15日現在)で80歳以上人口を確認すると、国民の10人に1人に当たる1259万人だ。2035年には1607万人にまで膨らむ見通しである。
80代以上ともなれば配偶者を亡くす人は増える。「人生100年」と言われる時代であり、それは単身になってから過ごす年月が長くなったということだ。一方、若い頃からシングルのまま高齢期を迎える人も少なくない。両要因が相まって独居高齢者が増え続ける見通しとなっている。
厚生労働省の国民生活基礎調査(2022年)によれば、すでに高齢者世帯(1693万1000世帯)のうち、51.6%が独居世帯(873万世帯)だ。高齢独居世帯のうち男性の27.1%、女性の44.7%が80歳以上である。女性の場合、85歳以上が24.1%となっている。