「コミュニティーセンター型の店舗」という新発想

新潟県上越市の直江津ショッピングセンターから良品計画が出店要請を受けたのは、キーテナントのイトーヨーカドーが同センターから撤退した2019年のことだった。良品計画はこのショッピングセンターの2階部分に、約2000坪(このうち直営エリアは約1500坪)という無印良品としては世界最大級の大型店をオープンする判断に踏み切った。

直江津ショッピングセンターの1階部分には、地元の食品スーパーが新たに出店したほか、既存テナントなどを引き継ぐ専門店街なども設けられた。このとき良品計画は、地方の中心市街地の活性化に役立ちたい、という思いから出店を決断したという。

しかし、直江津ショッピングセンターは、JR直江津駅から徒歩10分ほどの旧市街地にある。一時代前には家族連れなどでにぎわった商業施設だが、ロードサイドの商業施設に買い物客が流れる今、この立地条件で十分な集客を実現できるかという課題があった。

良品計画は検討を重ねた。広いフロアに無印良品の商品を並べるだけでは、地域の人たちに支持される店舗とはならないだろう。他社の商品も幅広く扱う、「社会的品揃え」を充実させたい。そこから編み出されていったのが、コミュニティセンター型の店舗である。

コミュニティセンターとは、地域社会のなかで住民などの交流の場となる集会所、図書館、学校などの公的施設が集積するゾーンであり、都市計画などでは街の中心部に計画的に配置したりする。「無印良品 直江津」は商業施設ではあるが、地域社会の交流に貢献するコミュニティセンターとしての役割も果たす店舗として企画された。

他社ブランドの人気テナントも出店

オープンした「無印良品 直江津」は、中央を100m以上の通路が貫く大型店舗となった。無印良品ブランドの衣料品や食品、生活雑貨や家具などが並ぶ通常の売場に加え、スターバックスやカルディや久世福商店といった、他社ブランドの人気のテナントも出店している。

地元の特産品を取り揃えた食料品店やフードコート、他社ブランドの人気テナントやイベントスペースなども入った無印良品
地元の特産品を取り揃えた食料品店やフードコート、他社ブランドの人気テナントやイベントスペースなども入った無印良品 直江津のフロア案内図(画像=プレスリリースより)

「無印良品 直江津」には、他にもユニークな売場が用意されている。地元のJAと連携し、新鮮な野菜や、地元の特産品を取りそろえる「なおえつ良品市場」、絵本や古本なども充実した「Book & Cafe」、地元の有名店のレシピなども取り入れたフードコート「なおえつ良品食堂」、最新のキャンプ用品も並ぶ「MUJI CAMP TOOLS」……。

医療機器を使った測定や健康相談が気軽にできる「まちの保健室」には、調剤薬局も併設され、高齢者向けの体操教室などのイベントも随時開催される。イベントスペースとして設けられた「Open MUJI」は、イベントの開催時以外は無料スペースとして開放され、来訪客が自習や休憩に利用できる。さらに移動販売バスの「Muji to Go」による中山間地での販売などによって、直江津ショッピングセンターを核にしたエリアイノベーションにも挑んでいる。