心打たれた文章を、何冊ものノートに書き写してきた

日本生命保険 宇野郁夫 相談役
1935年生まれ。59年、東京大学卒業後、日本生命保険相互会社入社。97年代表取締役社長就任、2005年会長。2010年より現職。

私は若い頃から体が弱かったため、病床で読むたくさんの本を通じて、人の英知に触れることが何よりの楽しみだった。感動した文章はすべて書き写してきたが、何冊にもなったそのノートの集積が私自身の哲学になっている。特に、文学でも芸術でも、その分野を極めるために真理を探求し続けた著者の本は、実に面白い。

たとえば直木賞作家であり評論家でもある長部日出雄氏の『二十世紀を見抜いた男-マックス・ヴェーバー物語』は、100年前のウェーバーの英知が今なお輝いていることをわかりやすく教えてくれる。ウェーバーは人としての徳(Virtue)を持ってこそ資本主義は発展するが、拝金主義に走ることによりいずれ危機がやってくると見越していた。

(近野ひろ美=構成 永井 浩、久保田史嗣、芳地博之=撮影)
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