突然の社長解任……理不尽な境遇すら糧にする名経営者の姿

バイエル薬品 栄木憲和 会長
1948年生まれ。69年佐世保工専機械工学科卒業。94年バイエル薬品入社、2007年より現職。

私は、週末に行きつけの本屋に行き、新聞や雑誌の書評をもとに本を選定する。ビジネス書だけではなく、人の細やかな感性や機微を描写した小説やノンフィクション、伝記も積極的に読むことだ。そうして多くの本を読むことで、自分なりの読書スタイルが確立される。『社長の椅子が泣いている』は、ヤマハやダイエーを再生させた名経営者・河島博の評伝である。妥協を許さない経営手法でオーナーと衝突、突然ヤマハ社長を解任された河島氏は、文句ひとつ言わずに身をひいた。理不尽な現実をあるがままに受け入れ、それを次の成長の糧にする姿勢に強く胸を打たれた。

現代世相評論『最後の波の音』は、経営破綻する会社は、会社を信じている社員たちを平然と捨てていくなどと辛辣な世評をしつつ、随所に人間味あふれたエスプリが効いている。こんな人生の「生きた教科書」が、よきにつけ悪しきにつけ身の回りにあることを教えてくれる。

(近野ひろ美=構成 永井 浩、久保田史嗣、芳地博之=撮影)
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