求める人材像の明確化も大切だ。学生に聞くと、どこの企業に行っても、「グローバル人材」や「自律的に課題解決のできる人」など、求める人材像の定義が似通っているという。そしてそのことが会社の差別化を難しくし、大量応募へとつながり、ESによる学生の絞り込み選抜をいっそう難しくしている。戦略論の基本は、差別化であり、これは採用戦略でも同じである。そしてもうひとつの視点が育成への注力である。人材のマネジメントは、一般的にサイエンスよりもアートである側面が多く、不確実性に満ちている。なかでも、採用というのは特にその傾向が強い。なぜならば、どう転んでも、極めて限定された情報に基づく意思決定になるからである。別の言い方をすれば、リスクの高い意思決定だともいえる。特に日本のような雇用の柔軟性が低い環境では“間違った採用”をしてしまうリスクが高い。新卒採用の失敗は、育成で補える体制を整えておくことが大切なのである。

ここしばらくで新卒採用のありかたは大きく変わった。ここで紹介したインターネット採用の導入とそれに伴う混乱だけではなく、面接解禁日や内定を出せる時期なども目まぐるしく変わり、また合意に違反する企業も少数存在した。そのたびに学生は混乱し、不安を覚えてきたのである。また企業も混乱しているようだ。

新卒採用には、SNS上での会話を盗み聞きして、第一次選抜を行うのではなく、学生と真摯に向き合い能力と自社への適性をまっとうに判断できるような採用方法が望まれるのである。

(平良 徹=図版作成 AP/AFLO=写真)
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