岡崎仁美●リクナビ編集長。1971年、香川県生まれ。93年リクルート入社。以来一貫して人材採用に関する営業および編集企画に従事。「ビーイング」副編集長、「リクナビNEXT」編集長を歴任し2007年より現職。

11年に入って日本でもフェイスブックブームが発生し、登録者は1000万人を超えた。単なる交流サイトにとどまらず、アメリカでは80.2%の企業がSNSを採用で使っているとの調査結果もある(11年、ジョブバイト社調査)。

アイティメディアのように既存の就職サイトを利用しないで新卒を丸ごとフェイスブックで採用している企業はまだ少ない。しかし浦野平也部長は「SNSを使えば企業の担当者が直接人材を採用できる。極端に言えば求人メディアはもとより人材会社もいらなくなる」と言い切る。

同社が実証したようにSNSを使えば、欲しい人材に訴求できると同時にコストも大幅に削減できる。毎年30人程度の新卒を採用している金融業の採用担当者は「年間の採用コストは約3000万円だが、求人サイトに1000万円強を支払っている」と明かす。この分を削減できるとなると、既存の求人サイトにとって脅威であることは間違いない。

だが、リクルートの岡崎仁美リクナビ編集長は新卒一括採用が続く限り、影響は軽微と見る。

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図1 89%の米企業がSNSを採用に活用(「Jobvite Social Recruiting Survey 2011」をもとに編集部作成。)

「SNSは企業が学生を直接採用する可能性を秘めたメディアだとは思いますが、多くの新卒採用企業は職務の適性で選ぶというよりは入社後の育成前提に、育てたいと思う人かどうかで判断している。アイティメディアさんは求める人材要件が明確であり、学生に参加してもらうことで人材を見極めるというソーシャルメディア的な使い方をされている数少ない企業の一つだと思っています。仮に新卒一括採用ではなく、中途採用のようにジョブでマッチングさせる形で学生を採るようになれば根本的に変わると思うが、少なくともこの5年で新卒採用のあり方が崩れるというのは想像しづらい」

一方、リクルートと同様に新卒の求人サイトを運営するエン・ジャパンの福田智洋サイト企画部長は「現時点では新卒やバイトを含めて求人サイトとの棲み分けができているが3年後、4年後は全然違うと思う。SNSを使っての採用がかなりのシェアをとっていく可能性は高い」と危機感を露わにする。