アーヴィンド・ラジャン●リンクトイン日本・アジア パシフィック担当 バイスプレジデント。ボストンコンサルティンググループ、セルネット・データシステムズなどを経てグラスルーツ・エンタープライズにてCEO会長を歴任。2008年リンクトイン入社。

じつは人材業界が台風の目と恐れているのが、アメリカのビジネスSNS「リンクトイン(LinkedIn)」の日本上陸だ。03年のリリース後、急成長し、11年8月には世界の登録者が1億2000万人を超え、フェイスブックに次ぐ巨大SNSとなった。最大の特徴は実名登録はもちろん、学歴、会社名、役職などのプロフィールを公開している点で、ビジネスユースがメーンとなっている。

これまで日本人は英語版での利用しかできなかったが、11年10月に日本語版がオープンし、英語版を含めた日本人登録者はすでに50万人を超えた。業界が恐れる最大の理由は、ハイエンド層といわれるビジネスパーソンのプロフィールが無料で見られるうえに直接コンタクトすることが可能になるからだ。

これまでのビジネス資源であった求人サイトや人材紹介会社が保有する人材リストが陳腐化し、場合によっては企業が直接採用するダイレクトリクルーティングが広がり、人材会社を駆逐する可能性を秘めている。先に紹介したジョブバイト社の調査によると、アメリカでは採用にSNSを使っている企業のうち、約87%がリンクトインを活用している。

同社の日本・アジアパシフィック担当バイスプレジデントのアーヴィンド・ラジャン氏は「アメリカのフォーチュン100社の70社がリンクトインでダイレクトリクルーティングを行っており、日本企業も国内だけでなく、海外の人材を探すことにも役立つだろう」と指摘する。

じつは日本語版にはないが、法人向けの有料の人材採用ツールも提供している。リンクトインには膨大なデータを分析する専門家がいる。簡単に言えば、企業が欲しい人材要件を提示すると、リンクトイン上の数多くのプロフィールの中から自社に最適な人材を抽出。企業がその情報を見てメールを出すなど直接アプローチできるという仕組みだ。