昔懐かしいリクルーター制が復活した理由
学生の不満の根底には、採用活動におけるSNSでのコミュニケーションが、リアルなコミュニケーションだとは感じられないことがあるのだろう。例えば、学生向けのSNS対策セミナーに行くと、プロファイルアイコンには笑顔の写真を使えとか、発言は意欲とリーダーシップを感じさせるような前向きのトーンで書けとか、友達は500人以上にしたほうがよいとか、いろいろな“お化粧”のアドバイスがあるらしい。そして就職活動弱者である学生は、こうしたアドバイスを聞きながら、結局はお化粧をした自分を就活用のSNSで公開するのである。
彼ら、彼女らにとって、こうした状況のもとで、参加者が氏名や学歴、写真などプロフィルを公開したうえで、「自由に意見を投稿する」などということは想定できないのである。したがって、その結果、自分が選ばれなかったら、こうしたリアルさを欠くプロセスで自分が落とされ、うまい演技をしたものが選ばれることに対して多くの不満が残ると感じるのである。またこうした演技はまじめな学生にとっては大きな負担となり、これも悪評に繋がるのだろう。
誤解しないでほしい。別に楽天がこうしたビジネスを立ち上げたことが間違っていると言うつもりはない。楽天はきちんとした市場調査に基づいて、こうしたサービスを事業として立ち上げようとしているのであろう。いまだ計画段階の事業案なので、どうなるかはわからないが、考えなくてはいけないのは、こうしたサービスに対するニーズが、世の中にあるということなのである。
ではなぜ、こうしたことになってしまったのだろうか。事の発端は、00年代初頭から盛んになったインターネットの新卒採用における活用にあると思われる。想像できるように、インターネットによって、募集活動や応募活動の便利さは格段に上がり、それまでの応募はがきの時代に比べて、学生も企業も多くの利便性を手に入れた。
だがインターネットの活用は、1人の学生が応募する企業数を格段に上昇させたのである。実際、文化放送キャリアパートナーズの平野恵子氏は、現在、一学生あたりのエントリー社数(平野氏の定義によると、「エントリー」は資料請求)が70~100社となっていると推定する(「企業側からみた学力問題-新卒採用における学力要素の検証」、日本労働研究雑誌、2011年、No.614)。私の周りにいる学生を見ていても、このぐらいの数は妥当である。