※本稿は、大谷義夫『1日1万歩を続けなさい』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
ウォーキングは「睡眠障害の予防」に有効
睡眠の質は「1日の歩数」で決まることをご存じでしょうか。
大分大学が平均73歳の男女860名の毎日の歩数と睡眠について分析したところ、次のことがわかりました(※1)。
・1日の歩数と「睡眠効率」は関連した
睡眠効率とは、次の式で求められます。
「実際の睡眠時間」÷「寝床で横になっていた時間」×100
たとえば「0時にベッドに入った瞬間に寝て、7時にアラームが鳴るまで目が覚めなかった」という場合は「睡眠効率100%」。
一方、「22時に寝て6時に起きたけれど、正味5時間しか寝られなかった」という場合は「睡眠効率63%」になります。
年齢を重ねると、なかなか寝つけなかったり、夜中に何度も目が覚めたり、朝早く目が覚めたりするものですが、この調査によると残念ながら、1日の歩数が多ければ多いほど長く眠れるわけではないことがわかりました。
しかしその一方で、1日の歩数が多ければ多いほど質のいい睡眠が取れていた(睡眠効率がよかった)ことがわかりました。
1日の歩数が多い人は、夜中に目が覚める時間と回数が少ないこともわかっています。
そこで大分大学は「ウォーキングは高齢者の睡眠障害の予防にも有効」と結論づけをしています。
【参考文献】
※1 Kimura N et al. Association between objectively measured walking steps and sleep in community-dwelling older adults: A prospective cohort study. PLoS One. 2020 Dec 14;15(12):e0243910. eCollection 2020.
太陽のあるうちに歩けば、「幸せホルモン」が増加
診察時、患者さんに体調を聞くと老若男女「よく眠れない」という声をよく聞きます。
ただこういう方は、じつは日中、かなり眠っていることが少なくありません。
「テレビを見ながらつい、うとうと1時間……」
これも習慣になると、体のリズムが崩れます。
シニアがよく眠れないのは、加齢とともにメラトニンの分泌量が減るためで、これはごく自然なことですが、たとえば日中、1時間も昼寝をすると、自律神経が夜の「リラックスモード」に切り替わり(副交感神経が優位になり)、どんな人でも夜、眠りにくくなってしまいます。
お昼寝は短ければ平均血圧を下げ、疲れも取れてリフレッシュできるのでおすすめですが、これは「脳の休憩」程度の、15分~30分以内にするようにして、できるだけ外を歩くのがおすすめです。
朝もしくは昼(太陽のあるうち)にウォーキングをすると、体の中に「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンがたっぷりと作られます。
このセロトニンは15時間後「睡眠ホルモンメラトニン」に加工されます。そうすると人はよく眠れます。
ですからよく眠れないという人は、朝もしくは昼、太陽のあるうちにウォーキングをすれば、幸せホルモンセロトニンが増えるとともにぐっすり眠れるというダブルの効果が期待できます(※2)。
【参考文献】
※2 和田快, 他.高知県内の運動部所属大学生への朝食・光曝露介入が介入中の睡眠・精神衛生に及ぼす影響.日生理人類会誌2010;15: 97-103.