サンパウロでは60億円がデング熱対策に投じられた

筆者の暮らすブラジル最大の都市サンパウロ市においては、3月5日にサンパウロ州政府が州全域におけるデング熱緊急事態宣言を発出。1、2月の感染件数は3万6984件で、やはり異例の件数を計上している。

筆者の実生活においても、自宅で蚊に刺されることが例年以上に多く、むしろ痒い経験からデング熱の感染拡大を調べ始めたほどだ。在サンパウロ日本国総領事館も2月に入って「サンパウロ州におけるデング熱の流行」のタイトルで、メーリングリストで在留邦人に注意喚起を流した。

州内の感染状況を確認するサンパウロ州保健局関係者たち
写真=サンパウロ州広報局
州内の感染状況を確認するサンパウロ州保健局関係者たち
サンパウロ州保健局の「デング熱100の質問」トップページ
画像=サンパウロ州保健局
サンパウロ州保健局の「デング熱100の質問」トップページ

サンパウロ州保健局は、2月6日に連邦政府保健省と連携したデング熱対策緊急オペレーションセンターを開設し、州の特別予算2億レアル(約60億5000万円)を市民への啓蒙けいもうと清掃強化に投じた。また同月26日にはウェブサイト「デング熱100の質問」を公開し、市民へ警戒を促している。

空軍が野外病院を開設も医療崩壊状態

首都ブラジリアでも、今年1、2月の感染件数が4万2718件と、既に昨年1年間の感染件数2万3990件の178%となっている。ブラジル空軍は2月4日に仮設テントによる野外病院を設置し、5日から運用を始めた。空軍は6日朝8時までに行った診察を約1400件と報じている。ブラジリア連邦直轄区はリオデジャネイロ市より早い1月25日に緊急事態宣言を発出した。

病床60床を備えたブラジリアの仮設野外病院
写真=P. Silva軍曹/ブラジル空軍
病床60床を備えたブラジリアの仮設野外病院

ブラジリア連邦直轄区知事は2月22日、デング熱の感染拡大のために同区の病院では既に医療崩壊が生じていることを発表し、「深刻な事態だが、感染のピークはこれからだ」と語った。

市民の診察に臨むブラジル空軍医療従事者
写真=P. Silva軍曹/ブラジル空軍
市民の診察に臨むブラジル空軍医療従事者
デング熱の媒介ネッタイシマカ
写真提供=Takeda Brasil広報
デングウイルスを媒介するネッタイシマカ

ブラジルにおけるデング熱による死者数は近年増加傾向にあり、昨年は史上最多の1079人を数えた。近年の増加はエルニーニョ現象による高温多雨によってデング熱を媒介するネッタイシマカが繁殖しやすくなっているからだといわれている。