低負荷×高回数か高負荷×低回数か

筋トレをする上で負荷が大切だということを前項でお話ししました。自分の強度を測るのは大変ですが、とくに筋力が低い人にとって筋トレはとても効率的にできる運動であることがご理解いただけたかと思います。

ただ、いくら効果的で時間をかけなくてもよいとはいえ、やはり高負荷はしんどいです。

例えばスクワットのように複数の関節を動かすものであれば、負荷が強くなるたびに関節への負担も大きくなります。

自宅でスクワットをする女性
写真=iStock.com/twinsterphoto
※写真はイメージです

息をこらえて動作をすれば、血圧も上がりますし、また筋力が強くなれば、ダンベルやバーベルなどの重りを使わないと筋力アップは難しいです。

ダンベルやバーベルは自宅で使うことは可能ですが、スクワットなどに使う場合はその重りも重く、高価ですし、自宅で置いておく場所の確保も大変です。

また、ダンベルやバーベルなどについては、筋トレ中に身体の上に落とすなどの事故のリスクもつきまといます。そういった点も考えて、高負荷の筋トレはなかなか難しい点が存在します。

さて、負荷が低いと全く意味がないのかというと、そうではありません。筋トレにも「2.専門家が筋トレを強くすすめる理由」でお話しした有酸素運動と同じように積の概念があるのです。

つまり、筋トレの効果として得られるのは「どれだけの負荷をかけたか」×「どれだけの回数行ったか」ということなのです。

負荷が少なかったら、その分回数を増やす

以前から筋トレの効果は「どれだけの負荷をかけたか」×「どれだけの回数行ったか」だということについての研究が行われていましたが、2023年にそれらをまとめた報告(※6)がなされました。

その報告では、健康な成人を対象とした筋トレの負荷、セット数、週の頻度で筋力や筋肥大の効果を比較したランダム化試験をまとめて、どの負荷・セット数・週の頻度で行うのが筋力と筋量によい影響を与えていたかということについて評価されています。

その結果として、筋力については、高負荷・複数セット・週に1〜3回が最も効果的であり、筋量については最もよかったのが、高負荷・複数セット・週に2回でありましたが、低負荷・複数セット・週1〜2回も十分な効果を示しており、筋量には複数セットが重要であるということが結論づけられています。

先述は成人を対象とした研究(※7)ですが、高齢者のみを対象とした研究も紹介します。こちらの研究も、高齢者を対象として筋トレの負荷とその回数の効果を比較した研究をまとめて、低負荷×高回数と高負荷×低回数のどちらが有効か検証しています。

その結果、筋量に関しては高負荷×低回数が低負荷×高回数と比べてやや有意でありましたが、筋力についてはどちらも変わらなかったのです。

以上のことをまとめますと、筋トレの負荷が少なかったら、その分回数を増やすことで同様の効果が期待できる可能性が高いです。

それを踏まえてどちらがおすすめかというと、筋トレを始めた最初は高負荷を行うのがそこまで大変ではないでしょうし、運動の習慣もついていないと思いますので、まず高負荷×低回数で短時間で行い、筋力がついてきて高負荷が難しくなった頃には習慣もついてくると思いますので、その時点で負荷を落とし(現実的には同じ筋トレを継続し)、回数を増やしていくのがよいと思います。

あまりにも負荷が低すぎると回数を増やさないといけないので負荷が低すぎないようには注意しましょう。