【原因C-1、2】選択する力が不足している人
「会社に残るのは嫌だが、転職も独立も不安だ。でも会社は嫌だ……」のように、選択ができず、悩みに陥っていくタイプの人たちの思考にも、やはり共通性のようなものが感じられる。
1つは「選択への耐性がない」という点である。トレードオフ(一方をとると他方を失うという、両立しえない関係)の状況下では、何かを選ぶことは、それ以外の可能性を捨てることである。人生経験が少なく、この「捨てる」というシビアな行為に慣れていない人にとって、それは相当に困難な行為となる。
もう1つは、自分自身の「基準」がないことである。たとえば「転職するかどうか」という選択は、いかに客観的なデータを集めてきたとて、それで転職できるわけではない。最終的には、個人が自分の「価値観(どんな人生を送りたいか)」に従って判断するよりほかはないのである。
選択はきわめて主体的な行為である。逆にいえば、決められたレールの上を歩いてきた人、他人に指示されるまま生きてきた人にとっては、なかなか難しいことなのである。
【原因D】リスクを過剰評価する人
未来に進もうとすれば、リスクが存在しないということはありえない。悩むことで人生の時間を浪費したくないならば、熟慮し、「これしかない」と思ったことは、リスクはあろうとも、実行に移さねばならない。
しかし、悩みを抱えこみやすい人の場合、この段になってもまだ、リスクを過剰に大きく見積もり、先に進むことを躊躇して、再び思考の迷路に舞い戻る場合が多い。辞表まで書いたのに、机の中にしまったまま、時間だけが過ぎていくというパターンである。
また、失敗を過度に恐れる人は、一方で「失敗する=恥ずかしい」という考えを強く持っていることも多い。プライドが高く、傷つくことを恐れている。そうした人は、なかなか思い切って前に進むことができないのである。
[悩み発生パターン別「必要な思考練習」はこちら] http://president.jp/articles/-/7868
(図版=奈良雅弘 撮影=若杉憲司)