健康な生活を送るためには、どんなことに気をつければいいのか。医師の和田秀樹さんは「病院に通うことが必ずしも健康につながるとは限らない。症状が出てどうにも困った状態になってから病院にかかったほうがいい」という――。(第1回)

※本稿は、和田秀樹『ゆるく生きれば楽になる』(河出新書)の一部を再編集したものです。

病院、待合室でフェイスマスクを着用した日本人シニア女性
写真=iStock.com/SetsukoN
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財政破綻した夕張市に起きた不思議な出来事

「夕張パラドックス」という言葉が話題になったことがあります。2006年、北海道夕張市は財政破綻が明らかになり、2007年には財政再建団体に指定されました。

市の総合病院は閉鎖、いくつかの診療所が残るのみという事態に陥り、それまで171床あった病床が19床へと大幅に減少、医療機関に行くための足である無料バスチケットもなくなってしまいました。

市民の約半数が高齢者で、医療に頼っていた人たちが多かったため、市民の健康に悪い影響が出るのではないかと心配されていたのです。

ところがその後の調査によると、夕張市の高齢者たちが一転、元気になったとしか思えないような、驚くべき結果が現れました。

死亡者数に変わりはなかったものの、高齢者の死因として上位にある「ガン」「心臓疾患」「肺炎」のうち、女性のガンを除いたすべての原因による死亡率が減少したのです。その代わりに増加した死因が「老衰」でした。また、救急車の出動回数も半減したというデータがあります。

無理して病院に行く必要はない

病床が少なくなった結果、ちょっと調子が悪いからといってすぐ入院せず、自宅で過ごして天寿を全うすることになった高齢者が多くなったのです。

同じような現象は、コロナ禍でも起こりました。2020年は、まだウイルスに対する不安が大きかったため高齢者ほど外出を控えており、それまで慢性的な病気で定期的に病院に通っていた人たちも医療機関での受診が減り、薬をやめてしまうこともあったのです。

そのため、健康状態が悪化して死亡者数が増加するのではないかという不安がありました。ところが、実際には2020年は11年ぶりに日本の死亡者数が減少するという結果になったのです。

こうしたことから、私は無理して病院に行く必要はないと言っているのです。