治療の始まりは不自由の始まり

では、どんなときに病院にかかるといいのでしょうか。自分が日常生活を送る上で、どうにも不快な症状があったら行くといいというのが私の考えです。

たとえば私自身、鼻水が止まらず、咳が出て、夜は眠れないくらい苦しい状態になっても、咳止めと鼻水止めの薬と漢方の麻黄湯まおうとうを飲んでよく休み、医者には行きません。どうせ一過性のものですし、医者にかかってよけいな病名をつけられでもしたらうっとうしいからです。

それほどの症状もない、なんの不自由もないのにわざわざ医者にかかった結果、病気らしきものが見つかって病名がついてしまうことが往々にしてあります。すると、その時点から治療が始まり、不自由な暮らしが始まりかねません。もちろん、それによってうまく治ればいいのですが、治りもせず、気分もよくならず、中途半端な状態がずっと続くこともあります。

そうやってずっと行動を制限しながら、よくなっているのかどうかわからない不安な状態を続けることを望むのか、それともとくに何もせずに自由に生活を続けながら、病気の症状が出た時点でそれを受け入れて対処するのか。

ある程度の年齢になったら、覚悟を決めて自分の人生を選択するのがいいのではないかと思うのです。

日本人の死因2位が「心臓疾患」のワケ

もし、健康診断を受けない、またはその結果を気にしないと決めて、だんだん体が弱って死を迎えることになったら、80歳までは「心不全」、それを過ぎると「老衰」が死因になるでしょう。ただ、それだけのことです。

日本人の死因の2位が心臓疾患というのも当然だと思うのは、本当の原因がはっきりしないときにもつけられる「心不全」という病名が、心臓疾患としてカウントされるからです。多くの人が恐れている心筋梗塞は、心臓疾患のうちのわずか2割程度に過ぎません。

もちろん死んでから解剖すればどのような病が潜んでいたか、臓器がどのような状態になっていたのかなどいろいろなことがわかります。けれどもそれをしない以上、真相は闇の中ということがほとんどです。

ですから、私は先に心配しすぎるよりも、症状が出てどうにも困った状態になってから病院にかかったほうがいいと考えているのです。