「御料牧場」で羊の飼育を始めた
その後、1888年に同牧場は「宮内省下総御料牧場」となり、1969年に栃木県那須へと移転するまでの間、天皇家の台所を支える食の要衝になる。
当時、この牧場では羊以外にも、馬、乳牛、鶏、豚などが飼育されていた。
こうして、三里塚は天皇家と切っても切れない縁で結ばれることになるのだ。
宮内庁が発行した『下総御料牧場史』には、こんな記録が残されている。
「1875年、ヨーロッパの王族専用牧場を模して、現在の千葉県成田市に開設した『宮内省下総御料牧場』で、皇室が着用する洋服の原材料となる羊毛を自給する目的で羊の飼育を始めた」(要約)
ジンギスカンは宗教上の制約を受けにくい
ジンギスカンに限らず、宮中で初めて羊肉が供された月日は分からない。
ただ諸外国では羊肉を食べる国が多く、宗教上の制約を受けにくいことから、海外の要人を招いた晩餐会などで早くから羊料理が供されていたことは間違いない。
ちなみに園遊会でジンギスカンが振る舞われたのは、戦後初めて園遊会が開催された1953年。
現在、成田市にある三里塚御料牧場記念館には、御料牧場に行幸啓された昭和天皇・皇后の写真と共に、日本に駐在する各国の大使などを相手に、着物姿に襷掛けの女性がジンギスカンを振る舞っている写真が展示されている。
当時は現在のようなジンギスカン鍋はなく、牛肉のステーキ同様、薄手の鉄板の上で羊肉を焼いて振る舞っていた。
こうして、園遊会では今もジンギスカンが振る舞われるということだ。