六角形のマークに込めた思い

創業者である小池和夫は、やはりアーティストだったのだと思います。大人に食べてもらいたいと思い、塩と青のりを使う。でも油で揚げているから食べ飽きてしまうかもしれない。ならば一味か七味をぴりっときかせようと日本人の口に合わせていった。

そんな創業者の発想を50年余り経ったいまの時代にフィットさせて答えを出す、それが私に与えられた命題でした。

トレードマークとして六角形が浮かんだのもそんなときでした。

親しみ、安心、楽しさに加え、本格、健康、社会貢献の6つからなる亀甲マークとするのはどうだろう。そこに込めた意味は、あくまでも裏コンセプトですが、これをCI(コーポレート・アイデンティティ)にしよう、と浮かんだのです。

佐藤章『湖池屋の流儀 老舗を再生させたブランディング戦略』(中央公論新社)
佐藤章『湖池屋の流儀 老舗を再生させたブランディング戦略』(中央公論新社)

すぐに調べてみると、湖から始まる会社はなく、これを亀甲マークの中に入れれば、絶対に湖池屋を表すマークとなると確信したのです。

創業者の出身地は、長野県の諏訪です。自身の名字は小池だけど、諏訪湖のように大きくなれということで「湖池屋」となった。そういう意味が込められていたので、夢を乗せるという意味でも湖はいいと思ったのです。

「湖」のマークを見ただけで、唾が出てきて食べたくなる。そんなシズル感もあると思った。「湖のマーク=美味しい」を定着させられると思ったのです。

「湖池屋」の名前がV字回復の基礎になった

同時に創業者がやりたかったことを現代に蘇らせることは有意義で、社員もついてきてくれるとも思った。いきなり外からやってきた佐藤章がトップになって勝手にやっているわけではない、ということもアピールしたかったのです。

こののちの湖池屋復活の速度を速めた理由は、湖池屋という名前に戻したことだと私は確信しています。

湖池屋が原点に戻って、亀甲の湖をロゴマークと掲げたところから、すべては始まったのです。

そして、それは、ライバル社が決して持っていない、永遠に持ち得ないものでもあったわけです。

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