自分だけを褒めないで欲しい
ほめられたことをプラスに受けとめて、次なる成長へとつなげていく若手社員もいますが、人によって受けとめ方が大きく二極化してしまうのがやっかいなところです。
実際に若手社員の研修のアンケートで「できればあまりほめないでほしかった」とはっきり書かれていたことがあり、この傾向が強いことを痛感させられました。これには、最近の若手社員特有の強い連帯感があることも影響しています。
たとえ自分が良い結果を出してほめられても、ほかの同期も一緒に良くならないと喜べないというのです。自分1人がトップでゴールするよりも、みんな笑顔で手を取り合ってゴールテープを切ることが心からうれしいと感じるようです。ですから、「君は抜群にいいが、ほかはまだまだだな! もっと頑張ってもらわないと!」というような発言をすると、当の本人は自分がほめられている気がせず、ほかと一緒に否定されている気持ちを抱くことすらあるので注意してください。
上司世代は「連帯感」というと先を行く人が遅れをとった人の手を引いたり、重い荷物の一部を代わりに持ってあげたりしてサポートをするというイメージではないでしょうか。しかし、最近の若手社員の中では、先に行ったり遅れたりせずに、全員が横一線で息を合わせて進むことという解釈で「連帯感」をとらえています。
「あなたも含めてみんないい」と褒めるべき
そんな「人前でほめられたくない症候群」の若手社員の頑張りを上手にフィードバックする方法が2つあります。
1つ目は、ほかの社員に聞こえないようにこっそりほめることです。そうすると、人から注目を浴びることが苦手な若手もうれしそうな表情を見せることが多いです。ただ、そのときに「さらなる活躍を期待してるよ!」などという言葉をかけると、若手は荷が重くなってしまいます。「この調子で引き続きよろしくね」という程度に留めておくのがちょうどいいです。
2つ目は、ほかの若手社員と共有して還元するという方法です。たとえば、若手の「新しい仕事を1人で完遂できるようになった工夫」や「自分の力で大きな仕事を勝ち取ってきた秘訣」「臨機応変な対応でトラブル回避につながった言動」を具体的にピックアップして全体で共有することで、みんなの成長に活かすようにするのです。これなら若手は一時的に注目を浴びることにはなりますが、あくまでも全員の飛躍を期待したうえでの扱いになりますから、自分だけが特別な存在という感覚をそれほど抱くことはありません。
若手にとってはチームの一員として工夫や秘訣をたまたま早く見つけただけであって、ほかの人にもその可能性は十分にあるという解釈になります。このように自分の成功がチーム全体での成功に還元されることは、若手の貢献欲を満たすことにもつながります。
つまり、「あなたは抜群にいい」ではなく、「あなたも含めてみんないい」というニュアンスで言えるように、若手社員が全員でゴールテープを切るイメージを持ちながら指導や教育にあたるようにするのです。