会社員を辞めて、起業に成功する人には、どんな共通点があるのか。経営コンサルタントの新井健一さんは「会社員として成功した人が、起業で成功するとは限らない。重要なことは『信念の一貫性』があるかどうかだ」という――。(第3回)

※本稿は、新井健一『それでも、「普通の会社員」はいちばん強い 40歳からのキャリアをどう生きるか』(日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです。

成功した男と失敗した男
写真=iStock.com/SIphotography
※写真はイメージです

「会社から認められていない=無能」は間違い

企業の人事制度というものは、環境の変化を受けて改定されるものである。そして当該制度は、役割や能力というモノを評価や処遇の対象とするが、特に能力を扱う際には注意が必要だ。

なぜなら、能力というものは、多くの前提条件を満たした上で、はじめて発揮できるものであり、前提条件が変われば当然だが、それまで有能だった人材が平気で無能にもなり得る。また、上司や周囲との相性によって、パフォーマンスが大きく変わることも、多くの人材が経験済みだ。更に、ある分野で能力を高めるということは、他の分野で活躍することを諦めることに他ならない。

したがって、仮にある業界の、ある会社の、ある職種の会社員として能力を発揮できなかったとしても、それは無能なのではなく、適性がないというだけなのだ。

たとえば企業組織において、選抜という観点で言えば、人材の見極めは概ね30代で決着がつく。そして、そのようなシステムにおいて、自分が会社から認められていない、評価されていないと感じて憤るか、落ち込むかする社員も相応にいるだろう。だが、生涯キャリアを全うするという長期的、戦略的展望に立てば、気に病むことなど何もない。

ただ、その職業には、それほど向いていなかったと分かっただけだ。

そして、適性に恵まれていないことを、(もっと言えば)相性が悪いことを自覚したならば、決してしがみつかずに手放すこと、そこから離れることをお勧めする。