「ワークマンプラス」「#ワークマン女子」などの新業態を生み出し、いまや「ワークマン」の顔として知られる土屋哲雄さん。メディアにもたびたび登場し脚光を浴びている人物だ。かつては24時間戦う商社マンとして活躍した土屋さんだが、今では業務時間の多くを“ひとり旅”に費やしているという。聞けば、起床時間は朝2時半、出社は週2日だけ。社外の人とはめったにアポを取ることもなく、受け付けることもない。そんな土屋専務の“型破りな働き方”とは――。

起床は午前2時半、出社は6時

朝は午前2時半に起き、3時には仕事を始めます。やることは仕事でものを書くか、本を読むかのどちらか。仕事で全国の加盟店や出店候補地を視察に行くことが多いので、そのレポートをまとめるのもこの時間です。出張の日は朝5時に家を出ますが、東京近郊の加盟店に行くときは、6時か7時くらいまで自宅で書き物か読書の作業を続けることもあります。

読書といっても、趣味の読書というより、仕事に直結する本をノートに取りながら読むのが通例です。今朝はChatGPTに関する本を読みました。電話もメールも入らないので、一日でもっとも集中できる時間です。

出張のない日は午前6時に出社します。ビルの正面玄関は開いていないので、裏口を開けてもらって入ります。とはいえ、私が出社するのは週のうち月曜日と火曜日の2日だけなのですが。午後1時半くらいには仕事を終えます。そして残りの平日3日間は、だいたい全国どこかのワークマン加盟店か出店候補地の視察に足を運びます。つまり、私の仕事の半分以上は視察という名の「旅行」なのです。

土屋 哲雄(つちや・てつお)ワークマン専務取締役 1952年生まれ。東京大学経済学部卒業後、三井物産に入社。三井物産デジタル社長、三井情報開発(現三井情報)取締役執行役員などを経て、2012年にワークマン入社。同社常務取締役を経て、19年から現職
撮影=鈴木啓介
土屋 哲雄(つちや・てつお)ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒業後、三井物産に入社。三井物産デジタル社長、三井情報開発(現三井情報)取締役執行役員などを経て、2012年にワークマン入社。同社常務取締役を経て、19年から現職。

経営者は現場の邪魔だから会社に来なくていい

こんなふうに仕事の多くの時間を会社の外で過ごすのが私の日常です。経営に携わる者が会社にいなくて大丈夫なのかと心配する人もいるかもしれませんが、社長からは「あまり会社に来るな」と言われています。理由は会社に来ると、現場の仕事につい口を出してしまうから。

そもそも上の人間が現場に口を出すとロクなことになりません。上が言うことはだいたい間違っているからです。現場の社員もそう思っているんです。ですが「違う」とは言えない。だから「わかりました」と返事だけはしておいて、自分たちの考えに合わせて指示内容を“曲げ”ているのです。

それで成果が上がると、「○○部長のおかげです」などと上司を持ち上げます。上司がちょこっと口を出すことで、部下にこのようなつまらない手間と気遣いをさせてしまうことを、皆さんは自覚されているでしょうか。本来、現場の人間の考えで動くから成果が出るのです。現場の人間より上司の考えのほうが上回るなんてことはありません。

それがわかっているから、当社の社長も週に1日しか会社に来ません。会社に来ても、口を出さなければいいじゃないかと思うかもしれませんが、人間なかなかそうはいきませんから、来ないのが一番なのです。そういうわけで私は週3で視察に出かけているのです。