Googleマップで出張先を予習、路線バスを必ず確認

さて、視察には2種類あります。1つは加盟店の視察、もう1つは出店候補地の視察です。前者の加盟店視察は、たとえば売り上げが振るわなくなってしまったお店の立て直しのために、店主の方とお話したり、対策を考えたりします。急激に売り上げを伸ばしているお店にうかがうこともあります。この場合は売り上げアップの理由を探るのが目的です。どちらにしても店主にお話をうかがうことが仕事。商社マン時代には人の話など聞いたこともなく、ひたすら指示だけ出していたのですが、自分も変わったものだと思います。

一方、出店候補地の視察は少し感覚が異なり、主たる目的は現地リサーチになります。初めての土地に行くときは、必ずGoogleマップで予習をします。私たちが出店する場所はだいたい駅から離れた場所にあります。そういう場合は一番に駅から路線バスがあるかどうかを確認し、バスが通っている場所なら、必ずそれを利用します。

現地でバスに乗ると、客層が見えてきます。バスの乗り降りの多さとか、車窓から見える人の往来や道沿いに立ち並ぶ商店の様子で“生きている”商圏か、それとも“死んでいる”商圏かもわかります。

基本的に、ひとりで行動します。複数の人間が動けば、待ち合わせだの、行動計画の立案だのと、ムダな作業が発生します。そういう無駄が嫌なのです。そもそも現地に行ってみないことには予定も立ちません。

大まかな予定は立てますが、現地の状況によって動き方は変わるものですし、そもそもひとりの方が活動の量も幅も増えます。1日3本しかバスの来ないところで、うっかり1本逃すなんてこともあります。東京で立てた予定など、地方では意味がなくなることは多々あります。部下などとても連れていけないのです。

土屋 哲雄(つちや・てつお)ワークマン専務取締役
撮影=鈴木啓介

足と目と耳を使って町の空気を感じる

かくして全国各地の路線バスにひとり乗り込み移動しています。バスの中では、人が多く乗り降りしたバス停もチェックします。バス停でバスが止まった隙に、車窓から路地の奥の方にも目を凝らしてみたり、行列ができているラーメン店があったら、降りて行ってみることもあります。とにかく足と目と耳を使って、町の空気を感じることを心掛けています。

現地に着いたら、付近の施設や道路の状況をチェックします。「大学通り」とか、「桜通り」など通りの名前も覚えますし、また近くに美術館とか大学があれば見に行きます。

車の交通量も測ります。10分くらい見ていれば1日の交通量がおおむねわかります。1万台以下だと「ワークマン」はいいけど、「ワークマンプラス」はだめとか、1万5000台だと「ワークマンプラス」はいいけど、「#ワークマン女子」はだめ、といったことも経験上、わかっています。

それに加えて大事なのが、道を走る車の速度。車が60キロで走っている道沿いは出店に向いていません。40キロくらいで走行している道ならOK。そんな基準もあります。